宣伝しないと売れないような商品は出さない
【ヨッピー】じゃあコストダウンして安く作れるようになったから安くしたのではなく、安くして採算が合わなくなったからコストダウンした、という。順番が逆なんですね……。
【正垣会長】そうなんです。それが優先順位なんですね。お客様が喜んでくれるのが一番。他はそれから。
【ヨッピー】ミラノ風ドリアを呼び水にして、お客さんがこれくらい増えるだろうから全体としてはこれくらい売り上げが取れて採算が合うな、といった計算もしてないんですか?
【正垣会長】してません。もちろん、「お客様は喜んでくれるだろう」と思ってますよ。そしてお客様に喜んでもらえればお客様は増えるんですよ。お客様が増えればやれる事は増えるし、採算もどうにか合わせられる。
結局「お客様が喜んでくれるかどうか」なんですよ。値段や商品をごまかして一時的に売れたとしても、お客様が本当に喜んでいなければ来なくなっちゃうじゃないですか。サイゼリヤが宣伝をしないのも同じ理由です。
宣伝すると、確かに一時的には売れるんですけど、でもすぐに来なくなっちゃう。その時に気付いたんですよ。「宣伝って、売れないから宣伝するんだ」って。ちゃんと美味しいものを、安く提供してお客様が喜んでいたら宣伝なんて必要ないですもん(※)。宣伝にお金をかけるくらいなら、他にもっとお客様が喜んでくれることに使いたい。
※サイゼリヤはCMなど広告宣伝に頼らない経営をしている
テーブルから粉チーズが撤去された理由
【ヨッピー】ちょっと意地悪な質問なんですけど、サイゼリヤが粉チーズの無償提供を中止にした時、粉チーズも原価が高くなってますから「さすがにサイゼリヤも採算合わなかったか~」みたいに言われてましたが、実はあれも採算の問題じゃないということでしょうか?
【正垣会長】採算の問題ではありません。あれには別の理由があるんです。
粉チーズを無償で提供していると、「元を取るぞ!」じゃないですけど、例えばヨッピーさんが食事している時に、隣で容器がカラになるくらいに粉チーズをかける人を見かけたらどう思いますか?
【ヨッピー】まあちょっと、「なんだかな~」って思いますね。
【正垣会長】だから提供をやめました。他のお客様も気持ち良く食事ができなくなるんですよ。採算の問題ではありません。
【ヨッピー】なるほど。すごく現場を見ているんですね。
【正垣会長】はい、毎日行きます。そこで「なんて高いんだ……」とか「なんてまずいんだ……」と思いながら食べています。