値上げをする前にやれることはいくらでもある

【ヨッピー】サイゼリヤのような大きな会社を経営していると、様々なステークホルダーがいると思うんですね。お客様に喜んでもらう、というのはもちろんそうなんですが、例えばちゃんと値上げをして利益を確保し、社員に還元するとか株主に還元するとか、それもひとつの社会貢献ではあると思うのですが。

【正垣会長】それも優先順位ですね。とにかくお客様が一番です。社員ももちろん大切ですが、サイゼリヤの離職率は高くないし、給料も同業他社より多く払っています。もちろん値下げしすぎてお金がなくなったら会社が潰れてしまいますが、まだお金はあるから従業員に給料を払うのと同時に、値上げもしないんです。究極、赤字でも会社は経営できますからね。それに、値上げをする前にまだまだやれる事はたくさんあります。

サイゼリヤ東京本部に飾られた社是
永井浩撮影
サイゼリヤ東京本部に飾られた社是

【ヨッピー】著作の中にも「コストダウンなどやれる事はまだまだある」と書いてありますね。

例えばサイゼリヤの看板メニューの「ミラノ風ドリア」ですが、あれはもともと480円で売っていた大人気商品であったものを、そこからさらに190円値下げして業界がびっくりしましたよね。どういうコストダウン・改善を積み重ねてあの価格を実現したんでしょうか。

【正垣会長】あれはね、先に値段を下げちゃったんですよ。当時から一番売れているメニューでしたから、それを190円も下げたらお客さんは喜んでくれるだろうと思って。

値下げで売れたお金で工場を造りコストダウン

【ヨッピー】採算も考えずに、ということですか⁉

【正垣会長】そう。「あれを安くしたらお客様が喜ぶだろうな~!」って。一番売れているものを安くして利益が増えるならみんなやるでしょうけど、他がどこもやってないっていうことはやっぱりそうじゃないんでしょうね。

でも、お客様に喜んでもらえたら楽しいじゃないですか。実際すごく喜んでくれたし、すごく楽しかったですよ。ただし、利益は出ない(笑)。

でも結果的にものすごい数のお客様が来店して、ものすごい数が売れるようになりましたから、そのお金でオーストラリアに大きな工場を造って、大規模に作るようにしてなんとかコストダウンして採算が合うようにしてね。しかもさらに美味しくもなった。