スマホが近くにあると脳のワーキングメモリが低下

実際、南メーン大学のビル・ソーントンらの研究で、スマホがそばにあるだけで、注意力が低下するということが分かっています。

同様に、テキサス大学オースティン校のアドリアン・F・ウォードらの研究で、机の上、ポケットやバッグの中、別の部屋にスマホがある状態で実験したところ、スマホが近くにあるほどワーキングメモリの機能と流動的知性(新しい問題に対して論理的に考えたり解決したりする能力)が低下することが分かりました。

単に、スマホが近くにあるだけで、認知能力が低下し、認知機能が損なわれること、すなわち集中して効果的に脳を使うことができなくなることが分かったわけです。

また、スマホへの依存度が高い人ほど、スマホの存在が認知能力に与える影響が大きいそうです。

このように、スマホは、現代の生活の中で、ほぼなくてはならない存在感を示すものにはなっていますが、集中したいときはそばに置かないことが大事なようです。

スマホを見て落ち込んでいる女性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

デジタル・デトックスで心身の健康を回復する

他にも、デジタル・デトックス、すなわち、スマホやパソコンなどのデジタル機器や、インターネットを一定期間使わない時間をあえてつくるのもいいでしょう。

ヴッパータール大学のテダ・ラトケらのメタ研究によると、スマホの使いすぎは、ストレスの増加、不安、抑うつ、睡眠障害、身体活動の低下、対面での社会的交流の減少、全体的な幸福感の低下、中毒的な行動、生産性の低下、現実世界との断絶感など、ネガティブな影響のオンパレードです。

しかし、デジタル・デトックスの時間を設けることで、幸福感、気分、健康行動、不安レベル、スマホへの依存を改善する傾向があるようです。

頭をリフレッシュしたり、リアルな世界での体験や人との繫がりを大切にするために、「モバイルフリー」な日をあえて設けて、実際の世界で遊んだり、友人や家族と楽しむ時間をつくりましょう。