2014年に「ニューハート・ワタナベ国際病院」を開設して以降、これまでに4000件を超える心臓手術を行ってきました。その半分がロボット手術で、全体の手術の成功率は99.6%を上回ります。

日本もアメリカも、平均死亡率は2.5%といわれていますから、この数字は世界的にも最高レベルであり、患者さんに安心して手術を受けてもらう環境を作り上げたと自負しています。また、術後から退院までの時間も大きく短縮、早期の社会復帰も実現しました。

日本では旧式の手術を行っている病院が多い

ただ、このロボット手術が日本において心臓手術の主流になったかと言えば、そうではありません。いままで知らなかった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

じつはいまだに旧式のやり方、つたない腕で手術を行っている病院が数多くあります。「ダビンチ」と呼ばれる手術ロボットが導入されていないため環境が整わず、また手術を行える医師の数も極めて少ないからです。

これは、患者さんにとって不幸なことでしょう。ロボット手術を受けていれば体に与えるダメージは少なく、その後も長く健康でいられたのに、そうでなくなるケースもままあるからです。

進歩を恐れてはいけない

「技術の発展は日進月歩」という言葉を聞いたことがあるかと思います。絶えず進歩することを表す言葉ですが、現代は江戸時代の1年分、平安時代の一生分の情報量を、たった一日で受け取っていると言われるほど、情報を取り巻く社会全体のスピードが加速しています。

渡邊剛『心を安定させる方法』(アスコム)
渡邊剛『心を安定させる方法』(アスコム)

昨日よりも今日、今日よりも明日、明日よりも明後日、医師は不安でいっぱいの患者さんの気持ちを理解し、意識して、動かなければいけないですし、それは、どんな分野の仕事でも同じでしょう。

そもそも仕事は、目の前の、あるいは誰かの「喜ぶ顔を見るために」「悩みを取り除くために」必要なことを提供し、対価としてお金を受け取るものです。

これまでのやり方が一瞬で古くなる時代に、患者さんやお客さんの想いに応えるために、進歩を恐れず踏み出してください。

【関連記事】
【第1回】なぜ心臓手術の名医は「ガラス張りの手術室」を作ったのか…日本は手術を隠したがるダメ医者が多すぎる
高確率で患者は死に、後遺症に苦しむ…トンデモ外科医"竹田くん"をクビにせず雇用し続ける病院の言い分
なぜメンタル休職する若手が増えたのか…本人が損する"安易な休職"を勧める「診断書即日発行クリニック」の罪
40歳以上の約5割には「隠れ心不全」の恐れがある…心臓専門医が警鐘を鳴らす「心不全パンデミック」とはなにか
「血液型で病気リスクがこんなに違う」O型に比べ脳卒中1.83倍、認知症1.82倍…という血液型とは何か