だからこそ谷口氏は、家事の基準を下げてみるべきだと主張するのだ。それはお母さんを楽にするだけでなく、家族にも、ひいては地球環境のためにもなるからである。そういう視点でものごとを見てみれば、生活環境にはさまざまな疑問が隠れていることがわかるだろう。そしてそれらは、生活をよりよいものにするためのヒントとしても機能するのである。

海外では「What」よりも「Why」が大切

そのことに関連しては、谷口氏の以下の発言にも注目したい。ここ数年の感染症騒動と、自身のひさびさのヨーロッパツアーを経て、谷口氏はあらためて強く感じていることがあるというのだ。

「日本では“What(なに)”は教えるが“Why?(なぜ?)”は教えない」ということ。
ヨーロッパ中で、たくさんの“Why?(なぜ?)”に出逢った。
(241ページより)

彼は「気になりだすと納得できるまで気が済まない」そうなので、一般的な日本人とは少し違うのかもしれない。が、いずれにしてもそんな思いから質問をすると、ヨーロッパの人たちはみな“Because~・(なぜかというと)”と、その理由を教えてくれたというのだ。

その理由のなかには納得できないこともあったようだが(当然の話だ)、説明してくれるというだけで、多少なりとも納得感があったそうだ。ここは重要なポイントである。

イメージしてみよう。日本では同じような状況になったとき、「ルールだから」「決まりだから」「そういうものだから」というような返答が返ってくることが少なくない。だが、そう言われながら育った子どもは、いつしか好奇心を削ぎ落とされて無気力になり、やがて同じことを口にする大人になってしまうかもしれない。

でも、それでいいのだろうか? そこに疑問を抱くからこそ、谷口氏はこう主張するのだ。

僕は自分なりに考えた理由を説明できる大人でありたい。
ルールや決まりというものは、「全知全能の神様」が作ったものではない。「物が下に落ちる」みたいな、いわゆる「自然の摂理」のようなものでもない。あくまでも、人間が作ったものだ。
それなのに、その理由も分からないまま思考停止し、無闇に従い続けるのは危険ではないだろうか。
(242~243ページより)

そう考えるからこそ、“What(なに)”ではなく、“Why"(なぜ)”と考え抜いてみるべきなのだ。時間はかかるかもしれないが、そうすればやがて、自分なりの答えが出るはずなのだから。

本書はそんな、“当たり前だけれど、当たり前すぎて誰もが忘れかけている大切なこと”を思い出させてくれる。

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