日本のお母さんは家事をやりすぎ?

谷口氏はかつてイギリスでホームステイをした際、イギリスのお母さんから「日本のお母さんは家事をやりすぎ」だと指摘されたのだそうだ。そのときには驚きを隠せなかったようだが、後日ドイツでも同じ話題が出たという。

というのもドイツでは、お母さんが料理に「火を使う」のは、晩ご飯の時だけだという(一切使わない日もあるとか)。
朝ご飯は、冷たいパンに冷たい具材を各々がはさんで食べたり、フルーツやシリアルだったり。昼ご飯も、冷たいサンドイッチやフルーツを各々が持っていくだけ。
(18ページより)

これも、少なくとも私にとっては“全面的に共感できること”ではない。そうなのかもしれないが、日本人には日本人のライフスタイルがあるからだ。それは、以下の記述についても同じ。

ホームステイをさせてもらったイギリスのその家庭では、掃除はしても月に1回か2回だった。
洗濯も、「バスタオルはかけていれば乾くから」と、週に1回くらいだった。
それに、食器洗いは、特大の容器に使い終わった食器たちを浸けておいて、使う時に使う人が使うものを洗う(浸け洗いで洗剤も最低限)というルールが敷かれていた。
(18~19ページより)
キッチンに放置された使用済みの食器
写真=iStock.com/Vesnaandjic
※写真はイメージです

私は掃除も洗濯も毎日したいし、食器洗いも欠かせたくない。仮に上記のようなことをしたとしたら、私の妻も不満を口にするだろうと思う。その点については谷口氏も「『清潔感』に対する日本の要求水準が高い」と指摘しているが、だから、ここで紹介されているドイツやイギリスのような習慣を“そのまま“真似たい”とは思わないのだ。

ただし、それは谷口氏の考え方を否定したいという意味ではない。それどころか、「考えてみる」ということについては大きく共感できる。

たとえば、このことに関していえば、「お母さんの家事が減ったら、その結果、どういうことになるだろう?」と考えてみることができるし、そうやって思いを巡らせることはとても大切だからだ。

例えば、洗濯や食器洗いが減れば、水の使用量も減り、汚水の量も減るわけだし、料理で火を使うことが減れば、ガスの使用量も減るわけだから、確実に環境にとっても良いことずくめである。
(20ページより)

こうした考えを取り入れてみれば、ドイツ人やイギリス人のようにならずとも、当たり前だと思っていたやり方を少しずつでも変えられるかもしれない。また谷口氏のいうように、お母さんの家事が減れば、ある程度はお父さんや子どもがやらざるを得ないことも出てくるだろうから、子供の自立にもつながっていく可能性もある。