まともな英語を身につけているか

語学に堪能な人材を豊富に採用している企業であれば、社内に受験者の語学力を見極めるノウハウがあるはずですが、そうした企業を受験する場合には、受験者間の競争もそれなりのものになると考えられますから、なおさら準備が必要になるでしょう。

実際に英語圏で生活をしてきた人たちの中には、試験のスコアで実力を判断されるなんて本意ではないと感じる人もいるようですが、英語圏でどれだけ長く生活していようとも、まともに英語を身につけていない人も多いことを忘れてはいけません。

したがって、数多くの受験者に会う面接官が、「自分はよくできます」あるいは「やる気があります」という売り込みの文句だけで信用してくれる、そんなことは有り得ないと自覚すべきでしょう。

私は顧客企業からの依頼で、海外事業にたずさわる人材の採用面接で面接官をすることがあります。その際の私の役割は、語学スキルや海外経験について尋ね、現在の実力と伸びしろに見当をつけることです。

一度、面接官として地方の大学へ出向き、学生を面接したときのことです。

学部4年の学生が、自分の語学スキルをアピールし、在学中には留学だけでなく、ワーキングホリデイのような制度を活用して、1年半ほど英語圏で働いていた経験があり、非常に高いレベルで英語を扱えると話しました。

日本で英語を勉強しただけの人たちと違い、自分は英語でのコミュニケーションスキルに長けているとも言います。

卒業を祝う学生
写真=iStock.com/Vladimir Vladimirov
※写真はイメージです

英語での自己紹介を拒否する学生

そこで私が「それでは、手短に英語で自己紹介をしていただけますか」と言うと、「えっ……」と返答したまま、何も話そうとしません。

「どうぞ。Please go ahead and introduce yourself in English.」と促しても、「い、いまですか。準備していませんので……」と答えるのです。

「大丈夫です。簡単でいいですから。さっき話されたことを英語で話してみてください」と言うと、黙り込んでしまいました。

こちらは別に意地悪をしているわけではないのです。3人もいる面接官(私はそのうちの1人)の前で、大アピールをするので、どのくらいのレベルの話かを確認しようとしただけです。

しかし、学生は「いえ、できません。やりません」と述べたのです。

面接官をしていると、こういう受験者もめずらしくはないのです。