「ベンチャー企業を応援」に違和感

何年も前になりますが、日本のレガシーな大企業の経営者100人とベンチャー企業経営者100人が集まったイベントがありました。

私はそのモデレーターロールの一端を担当したのですが、最終的にそのイベントを主導した経産省サイドが、大企業に対して「もっとベンチャー企業を応援してください」という締め方をしたのです。

私はこれに少し違和感を覚えました。

いま、日本政府は数多くのスタートアップ、ベンチャー企業の支援策を打ち出しています。私が共同創業した2つの会社、ベンチャーカフェ東京とその姉妹組織にあたるCICjapanには「スタートアップ創出元年」と書かれた岸田総理のサインがあります。感じるのは、政府が、大企業が、スタートアップを支援して「あげる」、というニュアンスです。

大人が子供を手助けするような、そんな雰囲気です。

母親と父親から褒められる男の子
写真=iStock.com/takasuu
大人が子供を手助けするような雰囲気(※写真はイメージです)

大企業も政府も「ベンチャー企業はよくわからない」

誤解のないように言えば、成長を促すことは素晴らしいこと、支援はとても心強いものです。一方、起業家は立派な大人なので、過保護にならない、あくまで対等な関係が望ましいと思います。

イベントのあと、大企業側の経営者のほとんどはさっさと帰路につきました。一方、ベンチャー経営者のほうは、どんどん私に話しかけたり、経営者同士の情報交換、コネクションづくりに余念がありません。

大企業経営者の視界には、そもそもスタートアップやベンチャー企業の経営者は入っていなかったのかもしれません。

政府も、大企業とはつながりもあり、理解しやすいが、ベンチャー企業はよくわからない、と感じているのでしょう。