皇室に対する「無関心」を打ち破る一手になる

近年、日本においても皇位継承問題や皇族数の確保といった問題が、政府や国会レベルでもようやく採り上げられるようになった。実際には、もうずいぶん前からこれらの問題は深刻化していたにもかかわらず、国民のあいだに議論が生じなかったのはなぜなのか。

そもそも国民の大半が「天皇とはなにか」「皇室とはなにか」「皇族の方々は日々どのような生活を送っているのか」といったことをほとんど知らないがゆえに、これだけの深刻な問題にもかかわらず、皇室に対する「無関心」が支配的だったからではないだろうか。

イギリスやヨーロッパ各国の事例を持ち出すまでもなく、「国民は自分たち王室のことを知ってくれている」などと安心していてはいけないのである。

むしろ国民は自分たちのことをわかっていない、だから自分たちの真の姿を知ってもらうためにも、とりわけ今後の皇室の存続を担っていくためにも、若い世代の人々を中心に皇族の日々の活動や各人の関心領域などを最新の機器を使って広報する必要があるのだ。

日本の歴史と文化にとって欠かせない「天皇」や「皇室」とはなにか。それがいま存続の危機に瀕している。これはなんとかしなければならないのではないか……といった声が、政府や国会からではなく、国民のあいだから沸き起こらない限り、皇位継承や皇族の確保といった問題の真の解決はあり得ない。そのためにもSNSを通じての広報活動は必定であると考えられる。

エリザベス女王は「クリスマス・メッセージ」を欠かさなかった

日本ではいまだインスタグラムしか開設できていないが、これまでの2カ月ほどの広報活動を見ても、かなり軌道に乗りつつあると思われる。

しかし、実によくできた映像などはむしろユーチューブにあげ、天皇皇后両陛下や各皇族方の日々のご公務はツイッターにも簡単にあげることで、機能を「棲み分け」ていくことも可能となろう。これらをすべて活用することで、皇室の広報にとってさらなる相乗効果も期待できる。

さらに申しあげれば、SNSによる日々の活動報告だけではなく、年に一度の大切なときに天皇陛下から国民にメッセージがあってもよいのではないか。

亡きエリザベス女王は70年以上に及ぶ在位のなかで、毎年ほぼ欠かさず12月25日の午後3時から「クリスマス・メッセージ」を国民(さらに彼女が女王を兼ねるコモンウェルスの国々)に向けて発信されていた。それは現在のチャールズ3世国王に引き継がれるとともに、これまたヨーロッパ各国の王侯や共和制を採るフランス大統領、ドイツ首相にまで模倣される慣習となっていった。