宮内庁のホームページに掲載された「ビデオ・メッセージ」の限界

実はコロナ禍の2021年と22年の正月に、新年の一般参賀が取りやめられる代替として、天皇皇后両陛下によるビデオ・メッセージが作成された。なぜ「実は」などと付け加えるのか。国民の大半がこの事実を知らないからである、筆者はご縁があって全国で講演会にお招きにあずかるが、この事実をご存じの聴衆はほぼ皆無であった。

それもそのはず。元日の午前5時半から宮内庁のホームページへアクセスしないと見られないしくみになっている。もちろんオンデマンドでいつでも見られるが、そもそもこのビデオ・メッセージに関する広報それ自体が不足していた。

せっかくメッセージを寄せられるのであれば、イギリスを嚆矢にヨーロッパ各国が実行しているように主要なテレビ局とタイアップして、たとえば元日の午後7時のニュースの最初の5~6分に放映するのはいかがであろうか。もちろん一局だけに任せるのはよくないという声が上がれば、主要な各局が輪番制で毎年担当し、そのかわりその時間帯はすべての局が同時放映する。

このような試みひとつだけでも、天皇陛下が日頃から望まれている「国民にさらに寄り添う」姿勢を強化できないだろうか。

上記のコロナ禍でのビデオ・メッセージは、2023年に一般参賀が再開されるや、再びおこなわれなくなってしまった。

「神秘に包まれた皇室」のままではいけない

かつて「君主制はつねにある種の神秘に包まれていなければならない」とイギリス君主に苦言を呈した老臣がいた。もちろんそのような側面は否定できない。しかしこのことばから実に100年以上を経過した21世紀のこんにち、君主制は国民の支持なくしては成り立たない情況がさらに強まっているというのが現状である。

エリザベス女王がその70年に及ぶ在位のなかで、試行錯誤を繰り返しながらも続けてきた「先祖からの伝統は守る一方で、時代とともに変わる王室」を実現していかない限り、王室であれ、皇室であれ、その存続は危ぶまれるのではないかと思う昨今である。

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