20分で11回の中断が発生していたある管理職
一度記憶が失われると、思い出すまでに時間がかかります。そしてそれが、ミスやエラーにつながってしまうのです。
図表1は、ある大企業の課長職の仕事中の様子を録画し、作業時間を計測したものです。日誌を見ると、本人は2時間デスクワークをしているつもりなのですが、実際には中断がとても多く、もっとも頻繁な時で20分間に実に11回もの中断が発生していました。これらの細かい中断は、部下から話しかけられたことによるものです。
中断によって記憶が途切れ、再び集中するまでに時間がかかってしまう。やっとまた集中できたと思ったら、今度は別の部下が相談にやってくる。このくり返しで、本来なら30分で終わるはずの業務に、2倍、3倍の時間がかかってしまうこともあるのです。
これを防ぐには、「ちょっといいですか」から時間を防衛する必要があります。
ただ、この時もっとも避けたい対応が、怪訝な顔をすることです。眉をひそめながら「何?」と聞き返していると、部下から話しかけられることは減っていきます。すると、重大なミスでも報告してもらえなくなり、取り返しのつかない事態が起こってしまうかもしれません。
「今から30分」自分の集中タイミングを公言する
そこで、我々が提案したのが、「今から30分間は集中して考えたい」という自分の集中したいタイミングを周囲に公言することです。
自分の作業に集中したい時は、「集中タイム」を設けて、「今から30分はごめんなさい。話しかけないでください」と伝えるのです。
もう一つの策が、「集中スペース」を設けること。ある建設会社では、1日の事務作業時間が、1人当たり平均3.5時間でした。オフィスを見渡してみると、一般的な「島席」の他、昇降式のテーブルやハイテーブルなど、さまざまなタイプの席があります。そのうち、島席で作業していた人が、電話を受けたり、部下から話しかけられたりで、作業の中断を余儀なくされた平均回数は27.9回。これではなかなか作業が終わりません。
そこで、パーテーションで区切った個人向けの集中ブースを設置しました。ここに入っている時は、誰も話しかけないし電話も取り次がない。そういうスペースを作ったのです。効果はテキメンで、中断回数は1日6.5回まで減少しました。これを前述の「集中タイム」の公言と併せて利用すれば、ゼロに近づけることもできるはずです。
とはいえ、ずっとブースにこもっていたのでは社内のコミュニケーションが滞るので、集中ブースを作る場合には、1日1時間など、時間を決めて利用することがポイントです。
「時間」と「空間」を他者から限定的に防衛することで、中断回数を減らし、業務の効率化を図りましょう。