店長の統率力が低い店舗は離職率が高い

ある外食企業から、「若手店長のマネジメントスキルを向上させてほしい」というご相談を受けたことがあります。この企業は経営状況こそ良好でしたが、店舗ごとに店長のマネジメントスキルにばらつきがあるということに悩んでいました。

企業内でマネジメントスキル向上のための対策や、採用フローの見直しにも取り組んでいたものの、4年の月日を費やしても大きな改善はされないというのです。

そこで、いくつかの店舗で現場のオペレーション分析を実施しました。店長のマネジメントが行き届いた店舗もあるものの、確かにスタッフ一人ひとりが思い思いに動いていて、それを店長も静観しているというような、店長の統率力が低いと思われる店舗も散見されました。さらに両者の違いを詳しく見てみると、違いは新規採用したアルバイトスタッフの離職率にも表れていることがわかりました。

離職の原因は一人ひとり異なります。もちろん、卒業や引っ越しのような個人的な事情で辞める人もいますが、それ以外の離職理由の大半を占める、「精神的な負荷」と「身体的な負荷」について考えてみました。

我々の調査によると、アルバイトスタッフの早期離職は、精神的な負荷と身体的な負荷のどちらか、場合によっては両方が大きくて、それが賃金に見合わないと感じることにより多発します。

スタッフの1日当たりの運動量がはるかに大きかった

この離職が多い店舗、すなわち店長の統率力の低い店舗では、スタッフにかかる身体的な負荷が、離職に影響していることがわかりました。スタッフの1日当たりの運動量を調べてみたところ、同業他店の水準よりも、はるかに大きかったのです。具体的な例を挙げると、スタッフ1人の1時間当たりの平均歩数が、同業他店の基準値の約2倍もあったのです。

カフェで働く男性店員
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同業他店では、ランチやディナーなどのピークタイムに、スタッフの歩数が増えています。その間、約1時間。それ以外の時間帯には、ピークタイムの1/2程度まで平均歩数が下がります。しかし、離職率の高さに悩むこの店舗では、同業他店のピークタイムの歩数の水準が、他の時間帯もずっと続いているのです。

これは、店舗の広さや来客の多さによるものではありません。道具の配置や接客フローなどのわずかな違いが1時間当たりの歩数に大きな差をもたらしていたのです。