保育士が給食を食べてはいけないのはおかしい

「特に私が嫌だなと思ったのは行事を行うことに反対されたこと。子どもと同じ食事が摂れないことでした。コビーは行事を重んじています。さまざまな行事を通して子どもたちを成長させ、保育士もまた体験を経て成長しています。ですが、行事について、否定的な見方をする人もいました。子どもの面倒を見ていればいい、外に連れ出すのは危険だ、と。

また、公立保育園では子どもと同じ給食を保育士が食べてはいけないといった決まりがあったようなのです。

聞いた話ですが、子どもは給食を食べているのに、保育士は出前のラーメンを取ったりしていると。給料日にはお寿司屋さんから出前が届くといったこともあったとか……。子どもたちは出前の人が来るのを見ているわけです。子どもだってお寿司を食べたくなりますよね。

私はこれは違うと思いました。それで提案したんです。保育士も子どもも同じものを食べることが大事です、と。

コビーでは大人でもおいしく食べられるようなレベルの給食を出しています。そして、毎日、子どもと一緒に同じものを食べることを通してお互いの距離が縮まっていきます。

器をプラスチックから陶器、ガラスに変えた理由

私たちが携わってから保育園を変えることにしました。まずプラスチックの器を全部やめて、陶器、ガラスに変えました。これもまた、前から勤務している保育士、保護者から『落として割ったりしたらどうするんだ。責任は取るのか』と怒られました。でも、少しずつ、少しずつ、コビーらしさを取り入れていったのです」

園で使用する皿やコップ、カトラリーなどの食器類
写真提供=コビーアンドアソシエイツ
園で使用する皿やコップ、カトラリーなどの食器類には陶器やガラス製品が使われている。そこには小林照男代表の母、典子さんの保育哲学が生きている

さて、水城が言ったような、「保育におけるコビーらしさ」とは何だろうか。

第一は、子どもたちに本物を見せること、本物に触れさせることだ。人は本物に触れると感動する。モノでもサービスでも、本物だけが人の心を動かし、波立たせる。子どもだってそれは同じだ。小さなうちから子どもに本物を見せるのが小林典子が始めた保育であり、小林照男が引き継いだことだ。

体験も本物のそれでなくてはならない。だから、行事でも本物をやる。やる以上は子どもたちを感動させる行事をやる。

コビーの保育士はシャツにチノパンというユニフォームを着て働く。女性保育士は自分の好きな色のスカーフを首に巻く。エプロンやジャージも持ってはいるけれど、ずっと着ていることは許されていない。

各園の園長は男性も女性もスーツやジャケットを着用して子どもたちを迎えて、また送り出す。保護者ともスーツを着て話し合う。子どもたちにかっこいい大人と認識させるためだ。保育士は子どもたちの憧れでなくてはならない。