「サイクルメニュー」を出す一般の給食とは違う

【三枝】ネーミングは大事です。子どもたちが食べたくなるようなネーミングにするのも料理の一環ですから。そして、真冬に夏の食材を出すのもおかしいし、盛り付けも重要です。給食ではなく、ホテルのランチですからね。そこは厳しくチェックします。

出てきたメニューを不採用にすることが目的ではなく、このメニューはここをこう改良したらどうだろうかといったことも重要な話題です。そうして、改良したら採用するメニューもあるのです。

代表も園長たちも新メニューに関してはかなり突っ込んだ意見を言いますよ。まあ、いちばん厳しい意見を言うのは私ですけれど。

試食用の新メニューをつくるのはひとつの園の調理師ですけれど、出すのは34園です。

統一メニューですから。東京でも山形でも仕入れることのできる材料でなくてはいけない。3000人の子どもが食べるわけですから、厳しくチェックするのは当然なんです。ちょっとおいしいくらいのものじゃいけない。

一般の給食は「サイクルメニュー」と呼ばれています。カレー、ハンバーグ、シチューといったものをぐるぐる回す。一方、うちは毎月、つねに新メニューが10品入ります。

フルーツの皮は薄く、煮物の水は少なくする理由

ここまでやっている保育園はないですよ。栄養士、調理師にとっても新メニューを毎月、つくるのはいい勉強になる。ある意味、調理師にとってチャンスの多い職場です。

年に1度、スイーツコレクションズって、おやつスイーツのコンテストもやっています。毎年、3月に全園が新しいスイーツを出して、試食した私たちがグランプリを選ぶ。

身内のコンテストですけど、34園あるから、グランプリはたいしたものですよ。

野地秩嘉『少子化に挑む保育園』(プレジデント社)
野地秩嘉『少子化に挑む保育園』(プレジデント社)

うちではそういったおいしさ、見た目だけではなく、フードロスも考えてメニューを開発しています。コロナ禍から物価が上がっていますよね。食用油なんか倍近くになっている。そういうなかで今までと同じ意識だったら絶対にコストが上がってしまう。また、フードロスを減らすことは時代の要請です。環境問題にも関わることだから、何でもかんでも捨ててしまうという調理はどんな飲食店でももうできません。

フルーツを剥く時は分厚く剥くと食べられるところを捨ててしまう。私はみんなにそういうところを注意するようにしています。

煮物なら、水をたっぷり入れると、それだけだしが必要になるでしょう。これももったいない。積み重なると調味料も油ももったいない。コビーのランチは給食レベルではありません。スイーツも専門店で売れるくらいのものになっています。

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