子どもたちが大好きなカレーも調理を変えた

【三枝】仕事に就く前、代表をはじめとするみなさんと面接したのですが、その時に言いました。

「私がやりたいのは給食ではありません。ホテルのようなちゃんとしたランチです」

家庭料理でもなく学校給食でもない。ちゃんとしたランチを出して、子どもたちと保育士に食べてもらいたい。代表はその答えが気に入ったのではないかと思います。

指導に行った時のことはよく覚えています。コビープリスクールのだ、でしたね。

最初は栄養士、調理師は私の話をなかなか聞いてくれませんでした。それまでやってきたやり方がいいと思っていたのでしょう。

私はみなさんを叱りました。

料理人ってついつい本気になるとそうなってしまうんです。以降、みなさんは私の話を真剣に聞いてレシピに取り入れてくれるようになりました。

たとえば、コビーカレーという子どもたちが大好きなチキンカレーがあるんです。私はレシピをリニューアルしました。玉ネギの炒め方、炒める方法、香辛料をいつ入れるのか、トマトを入れたらどこまで炒めるのか、すべて変えたのです。

それは子どもが食べやすいようにするための工夫でした。玉ネギを飴色に炒めるにはどうすればいいのか。どうすれば時間もかからず、きれいに炒めることができるのか。

それは現場で鍛えられたプロの料理人しか知らないことなんです。

季節に合わせて旬の食材を使うよう心掛ける一方、食品ロスの観点から可食部を極力使い切るくふうもされている
写真提供=コビーアンドアソシエイツ
季節に合わせて旬の食材を使うよう心掛ける一方、食品ロスの観点から可食部を極力使い切るくふうもされている

料理5品+おやつ5品の新メニュー開発を毎月行う

今のコビーカレーは前のものよりもココナッツミルクの量が抑えてあります。以前は少しココナッツミルクが多かった。それで半分以下に抑えたんです。ココナッツミルクを減らして、仕上げにバターモンテ(冷たいバターを熱いソースに加えること)をして、風味を付ける。そうすると、カレーの風味が格段によくなるわけです。仕上げのバターモンテが料理の味、香りをアップさせる。

現場で鍛えられたプロの料理人は料理人として型とかスタイルを持っていないといけない。私の場合は臨機応変。要するに、その時に応じて柔軟にいちばんいい方法を取る。

そうやってコビーの給食をおいしいランチに変えました。

今は月に1度、献立会議をやっています。新しいメニューを提案してもらって、代表、数人の園長と私で試食するのです。各園の調理師、栄養士に2カ月先の新メニューを開発してもらう。料理が5品とおやつが5品。

調理師のプレゼンを聞いてから試食です。私たちがチェックするのは味だけでなく、ネーミング、季節感、そして、見た目。味はどこでもそれほど食べられないというものはありません。そこの差はあまりない。