おいしい料理と演出で子供は食事に感謝する

わたしにとってはそれほど希少なジュリエンヌスープをコビーの子どもたちはごく普通に食べている。わたしは5歳児と同じ量の食事をしたのだが、「5歳児ってこんなにたくさん食べるのか」と驚いた。大人と同じ量を食べて、彼らはカッペリーニやジュリエンヌスープをおかわりするのである。

出先では立ち食いそば程度しか食べないわたしはコビーの昼食を必死になって食べ、そして、反省した。

「もっと栄養を摂って、かつ真剣に食べなければいけない」

おいしい料理、新しいメニュー、演出された食卓が用意されていれば子どもたちは真剣に食事に向き合う。そして、食事に感謝する。

2011年からコビーの総料理長としてメニュー開発と監修にあたっているのが山梨県生まれのグランシェフ、三枝清知だ。佐伯栄養専門学校で栄養学と調理を学び、卒業後、愛媛県のホテル奥道後に就職。同ホテルは来島どっくなどを再建した経営者、坪内寿夫がつくった豪華リゾートである。

その後、26歳の時に銀座東急ホテルへ移り、料理人の道を歩む。パリの2つ星料理店、ミッシェル・ロスタンで研修を受けたこともある俊英なのである。同ホテルの総料理長を務めた後、コビーに招かれた。

総料理長の三枝清知さんはホテル奥道後(愛媛県)、銀座東急ホテル総料理長などを経てコビーに招かれた
写真提供=コビーアンドアソシエイツ
総料理長の三枝清知さんはホテル奥道後(愛媛県)、銀座東急ホテル総料理長などを経てコビーに招かれた。大人が食べてもおいしくて、栄養があるランチをつくるよう指導している

大人が食べてもおいしくて、栄養があるものを

彼は習い覚えた一流ホテルのレシピで、子どもたちのために安全安心な料理をつくっている。フードロスが出ないよう調理指導をし、新鮮な素材をいかに仕入れるかといった調理以外のことも教えている。

三枝総料理長の話だ。

【三枝】コビーでは保育士も子どもたちと同じものを食べます。ですから、私は大人が食べてもおいしくて、栄養があるものをつくるよう指導しているのです。大切なのは、子どもも大人も一緒に食べて、一緒においしいと感じること。それが食育です。調理をする際には、HACCP(ハサップ)の基準に基づき、「大量調理・衛生管理マニュアル」を活用しています。中心温度が85℃で1分以上の温度を保つ調理ですね。

私は銀座東急ホテルに27年、在籍していました。銀座東急ホテルは2001年に閉館し、跡地は現在、時事通信社の本社ビルになっています。私自身はホテルが閉館した後に東急ホテルを辞めて、出身校の佐伯栄養専門学校で講師として教えていました。

数年の後、小林代表から「料理を見てほしい」と声がかかったんです。それが2011年でした。当時、コビーはすでに複数の園を運営していて、料理に熱心な保育園と聞いていましたから、仕事を引き受けました。