間違い10 大学病院であれば安心安全
日本人の大半は、「大学病院」と言えば、「優秀なスタッフ、設備が揃っていて、最善の高度医療を提供してくれる」と、期待しているのではないでしょうか。しかし、残念ながら、それは大いなる“誤解”です。
大学病院は、原則として循環器内科、脳神経外科、精神科といった診療科の「専門医」の集合体。心臓のカテーテルなら循環器内科、脳卒中の手術なら脳神経外科といった具合に、年代から始まった「臓器別診療」を行うのが基本スタイルです。
専門医はもちろん、専門領域には詳しいのですが、専門外の領域には疎い人がほとんど。言い換えれば、大学病院は、特定の部位や病気を治療するのは得意だが、患者さんを“人間全体”で診るのは苦手だという医者ばかりになってしまったのです。
大学病院は、巨大組織であるがゆえの弊害も少なくありません。分業が進みすぎて、点滴や採血は看護師、検査は技師に任せきりにするので、担当の患者さん自身のこともよくわからない医師が大勢います。さまざまな診療科がある総合病院なのに、診療科同士の交流が少なく、連携も不十分。だから、複数の病気を併発した患者さんが、同じ院内なのに、診療科を「たらい回し」にされるといった現象も起こるわけです。研修医の教育機関、先進医療の研究機関でもあるため、実は、「経験の乏しい新米医師が新薬を投与する」といった、リスクの高い治療も行われています。
有名大学病院より近所の「名医」を
若い患者さんの場合は、病気の完治を目指すために、大学病院で高難度の先進医療にトライするといった選択をしてもいいでしょう。しかし、高齢の患者さんには、大学病院は適していません。高齢者の場合、複数の病気を抱えているケースが多く、全身状態の良し悪しも個人差が大きいので、一人ひとりに応じた総合診療が求められるからです。
そこで、高齢の患者さんなら、高齢者医療の経験が豊富で、話をよく聞いてくれる、地域の「かかりつけ医」を見つけましょう。
例えば、薬物療法では、患者さんとしっかり向き合わない大学病院の医師の場合、検査データの数値しか見ないので、データを“正常値”にするための「多剤投与」に走りがちです。正常値は“平均値”でしかありません。すると、薬の副作用が強くなり、検査データが改善しても、患者さんの体調が悪化するケースがよくあります。一方で、いいかかりつけ医なら融通がききやすく、「薬を飲んだら体調が悪くなった」と伝えれば、薬の量を減らしてもらいやすいでしょう。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年6月14日号)の一部を再編集したものです。