他人を変えようとするのではなく、自分を変える

【澤】ストレスの最大の原因というと、やはり人間関係が挙げられますよね。人間関係の築き方について、ふゆこさんはどのような意識を持っていますか?

【ふゆこ】それこそ、「自分以外の他人」のような、自分でコントロールできないものをコントロールしようとはせず、コントロール可能な自分の考え方や行動を変えていくということが、なにより大切ではないでしょうか。この思考を、わたしは「対策自分論」と名づけています。

【澤】それは面白い言葉ですね。確かに、「あなたの言動はわたしのストレスの原因になっているから、その言動を変えてください」といったところで、相手は変わってくれませんからね。

【ふゆこ】だからこそ、「すべての起きたことの原因は自分にある」と考え、「そうであるなら、どうするか?」と対策を考えるのです。いわゆる、ブラック会社に勤めていることがつらい場合であれば、それを会社や他人のせいにしたところで事態はなかなか好転しません。その会社にも悪い側面もありますが、そもそもは、その勤務先を選んだ自分に原因があるのですから、自分で解決に向けた行動を考えなければなりません。

そのように、自分自身に目を向ける姿勢は、自分のなかでの「優先順位」を決められることにもつながっていきます。限られたお金をなにに使うのか、どの費目を削減しなければならないのかを決めるには、優先順位が欠かせませんよね。それができずに「あれもこれも」となんにでもお金をかけていては、お金が貯まらなくなって当然です。

澤円さん
写真=石塚雅人
澤円さん

「常識」を捨て、「別のやり方」を考える

【ふゆこ】澤さんはかつて日本マイクロソフトにお勤めだったと伺っています。大きな組織ですから先に話題に挙がった人間関係の問題も複雑そうですが、そうした問題にどのように対応していましたか?

【澤】そういう意味では、僕はとても恵まれていました。もちろん対顧客など、それこそふゆこさんがいうようにコントロールできないこともあります。なかには、「こっちが金を払うのだから指示通りに動け」といった姿勢で接してくる相手もいるわけです……(苦笑)。

ただ、ラッキーだったのが、そういったストレスを軽減してくれる要素があったということ。それは、まったく価値観の異なる仲間が社内にたくさんいたことです。僕はマイクロソフトテクノロジーセンターという組織のセンター長でしたが、そのセンターは世界40カ所ほどに展開しています。

そして、それぞれのセンター長たちが集まってコミュニケーションを取ることもあります。肩書が同じですから、本来的に役割は同じですよね? でも、それぞれが管轄している国や地域が異なります。各自の環境をバックグランドに話をしてみると、自分としては大問題だと認識していたことが、別のセンターではまったく問題になっていないということも多々あるのです。

【ふゆこ】問題というのは、先の例にあったコントロールできない顧客などですか?

【澤】それもありますし、日本の商慣習などいわゆる“常識”と呼ばれるものです。環境や文化が違えば、僕が大問題だと思っていたこともまったく問題になっていない。その事実を知ると、「どうして僕はこんなことにとらわれていたのだろう」と気が楽になりましたし、「常識にとらわれない別のやり方もあるのでは?」と考え、対処することもできました。