エスカレーターを歩く人は、時間の使い方が悪い

そしてこのキャンペーンについて説明する際には、歩行と片側空けは接触事故の危険の原因となるだけでなく、身体の不自由な人を長蛇の列に追いやる「迷惑行為」に該当することを、ハッキリ認識できるようアナウンスすることが必要だ。

そもそもエスカレーターを歩行したからといって、立ち止まって乗るのと比較して、たいして時間の節約にはならない。先ほど紹介した速度から「半分の時間で上がれるじゃないか」と思う人もいるだろうが、20mのエスカレーターであっても40秒が20秒になるだけだ。20秒の時短にどれだけの意味があるというのだろうか。

エスカレーターを利用している人々
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

SNSでは「右側に立ち止まっていた人がいたせいで電車に乗り遅れた」などと愚痴を投稿している人がいるが、たった20秒程度で乗り遅れてしまったのなら、それは立ち止まっていた人のせいではない。そこに至るまでの時間の使い方と読み方が間違っていただけだ。

「歩きスマホ」で寸暇を惜しんで情報収集し、「エスカレーター歩行」で数秒早くプラットホームに到達、「駆け込み乗車」で一本でも早い電車に滑り込む……。これらをおこなっている人は、自分のことを効率的で時間を有効活用している人間だと思い込んでいるかもしれないが、それは大きな勘違いだ。自分の行動によって迷惑する人が生じても気にしないという、極めて自己中心的な考えなのだ。

自信を持って「歩行」をブロックしよう

この「因習」がおかしいと思いながらも、つい片側空けに「協力」してしまっている皆さん、自己中心的な行動に道を空ける必要などない。今すぐ両側交互に立ち止まって乗ることを実践しよう。

やり方は簡単。前の人が左側に立ったら右に立てばよいだけだ。あなたが「お歩きになりたい方」をブロックすることで、エスカレーターを上ることのできない人を、長蛇の列から救い出すことができるのだ。きわめて真っ当な行動ゆえ批判される筋合いなどない。自信を持ってブロックしよう。

もしその自信が持てなかったら、せめてこの記事をプリントアウトして、駅係員に渡してほしい。あわせて片側空けを放置することは、健常者にたいする「非合理的配慮」であって、社会そしてあらゆる企業に現在求められている、障がい者にたいする「合理的配慮」と真逆のおこないであることを、教えてあげてほしい。

そして本稿を読んでいる鉄道各社関係者の皆さん、この「片側空けと歩行」が、輸送効率化や危険の問題はもちろん、身体の不自由な人をバリアフリー装置から追い出す迷惑行為であるとの認識を持って、「歩行禁止」の大キャンペーンを全国展開してほしい。

全国の鉄道各社が同時に本気になれば、1年もあれば人々の行動は変えられるだろう。もっとも1年後に「片側空け」がこの国から撲滅されたら、珍妙なエスカレーターを導入してしまった大阪万博が、また笑いものになってしまいそうだが。

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