二階氏不出馬で2つの課題を同時にクリア

➀二階氏を政倫審に出席させないこと、②「政治とカネ」の問題への「けじめ」のための処分で自らに責が及ばないようにすること、という2つの課題を解消するために、岸田首相と二階氏が導き出した答えは、「二階氏の次期衆院選への不出馬」というものであった。

二階氏が次期の衆院選に出馬しないのであれば、説明責任を必ずしも果たさなくても、①の政倫審への出席を回避できる。さらに、岸田氏にとって好都合なのは、②派閥の領袖への責任の波及についても、安倍派の領袖であった安倍氏、細田氏はすでに鬼籍に入っており、二階派の領袖である二階氏の責任が回避されるならば、岸田派の領袖の岸田氏の責任は問われることはないという予測も成り立つことだった。

結果、二階氏は3月25日に次の衆院選への不出馬を表明した。結果として、この二階氏の行動は、岸田首相への責任論が波及することを阻むこととなり、岸田氏に二階氏は恩を売ることとなった。

保守王国・和歌山で起きている“異変”

この「政治とカネ」の問題は、すでに候補者の決まっていた和歌山政界に対して大きな影響を与えた。4月4日に岸田首相は、自民党の参院幹事長であった安倍派の世耕弘成氏に「離党勧告」という処分を下し、世耕氏は即日、離党届を提出した。

これにより参院和歌山選挙区選出の国会議員は鶴保庸介氏だけとなった。ここで鶴保氏が参院を辞してしまえば、和歌山に自民党の参議院議員はいないこととなってしまう。

またこの和歌山県は「10増10減」により、次期総選挙から小選挙区が3議席から2議席に減少することが決定している。そこで2023年6月には、新1区には鶴保氏が参院からの鞍替え、新2区には二階氏が候補者として決定されていた。

衆議院小選挙区が3区から2区に減る和歌山県(総務省「衆議院小選挙区の区割りの改定等について」より
衆議院小選挙区が3区から2区に減る和歌山県(総務省「衆議院小選挙区の区割りの改定等について」より

しかしながら参院議員がゼロになることを恐れ、鶴保氏は今回の鞍替えを断念した。さらに世耕氏は離党、二階氏は次期総選挙へ不出馬ということで、自民党の衆院選候補はいなくなり、自民党は両選挙区ともに新しい候補者を獲得する必要が出てきたのだ。