二階氏を政倫審に引っ張り出さなかった理由
自民党議員のうち、政治資金収支報告書に対する不記載で会計責任者が逮捕されるなどした議員以外で、「裏金」の金額が最も多かったのは二階氏であり、国民の間から政倫審への出席を求める声すらあった。しかし、こうした声に対しては二つの意味で岸田首相は懸念を持っていたと考えられる。
まず、二階氏を政倫審に出席させると、結束の固い二階派から恨みを買う可能性があったこと。そうなった場合には、二階派の会員の面々からは今年秋の自民党総裁選において支持をもらうということは夢物語となる。
さらに二階氏が政倫審に出席したとして、与野党からの質疑に対してベテランの二階氏がどういったことを話し、どういったことを話さないか、という答弁内容のコントロールが利かないことだ。予測のできない答弁が二階氏から飛び出した場合、政権に重大なダメージを与える可能性がある。
いずれにしても、こうした懸念がある中では、二階氏を政倫審に登壇させられない、というところがあり、二階氏については何らかの対応が必要となった。
岸田首相「自分が処分されないよう処分を下す」
さらなる懸念は、岸田氏自身にもかかわることであった。
岸田氏はこの「政治とカネ」の問題の一つの帰結として、「裏金」問題に関与した議員を処分すると表明していた。しかしそこで新たな問題が出てくる。
つまり、「裏金」問題に関する処分をどの点まで拡大するか、という問題である。その処分の範囲を拡大していけば、場合によっては首相である自分にもその処分の対象は及ぶことになる。
そうなってくると、場合によっては「処分された首相では、政権を維持する資格はない」という意見も出現する可能性がある。それでは政権を維持するために「けじめ」として処分を行うのに、自分の政権を失ってしまうことになってしまう。
そこで岸田氏は、自分に責任が及ぶことないよう処分を下す、ということを考えたと推測できる。