仕事ができる変わり者は許される

わがままに生きるためには、なんでも言うことを聞く便利な人間だと思われないことが肝心です。そのためには、「あいつは変わり者だ」という烙印を押されてしまったほうがいい。そうすれば干渉されたり批判されたりしなくて済むからです。

何か仕事を頼まれたとき、「これは引き受けられないな」と思ったらスッパリ断ってしまいましょう。引き受けてしまうほうが気が楽で、断るのは脳にとってストレスフルです。しかし引き受けた後の大変さと、断ったときの嫌な気分を比較すれば、できないことは「嫌です」と断ってしまったほうが自分のためになります。

日ごろから「できないことはできない」「嫌なことは嫌だ」と言い切る習慣をつけておけば、頼みを断っても「こいつは主義主張が強いからな……」と思われるだけで、反感を買ったり後を引いたりせずに済みます。

そのとき大切なのは、「変わり者だけど、仕事はできるから仕方ないか」という評価です。誰でも仕事の中に、得意と不得意があります。得意な分野に関して「あいつに頼めばなんとかしてくれる」という頼りがいを得ていれば、不得意な仕事を断っても波風は立ちません。必要不可欠の存在であるほど、わがままが許されやすくなっていきます。

会社は組織に属する人間に得意なことも不得意なこともさせようとします。得意なことは頑張るけれど、不得意なことはやらないのが、うまく社会を渡っていくコツかもしれません。「わがままで変わり者だ」という認識は、徐々に植え付けていく必要があります。我を通さないと思われていた人がいきなり自分の意見を主張し始めたり、飲み会に必ず参加していた人がいきなり断ったりすると、何かあったのだろうかと痛くもない腹を探られます。場合によっては、変節を快く思わない同僚に意地悪をされかねません。しかし最初から「この前の飲み会は行ったけど、今日は行きたくないから行かない」という態度を貫いていれば、自由な人間なんだと許されてしまうものです。

上司のわがまま=ハラスメントに注意

相手との関係性によって、どこまでわがままでいいのかという距離感を測ることも大切です。この程度なら大丈夫だろうと思っても、相手はやりすぎと受け止め、不快にさせてしまう場合があるからです。

その際に意識しておきたいのが「わがまま度の対称性」です。自分だけわがままを言って相手のわがままを聞かないのでは、関係を保てません。対称性の中でわがままを言い合える相手なら楽ですが、わがまま度が非対称の相手とは、なるべく付き合わないほうがいいでしょう。

行動に上下関係が加味される組織の中では、わがままにも違いが生まれます。基本的に、上に対しては好きなことを言って楯を突いてかまいません。なぜなら、相手の立場が強いからです。しかし、下の者に対しては同じようにはいきません。部下の中には、やりたくないことをやりたくないと言えないタイプもいますから、要求によっては相手が断り切れず、潰れてしまうかもしれないからです。これは上司のわがままではなく、ハラスメントと認定されてしまいます。

各個人の個性や感性を踏まえて対処の方法を変えることが、上司としての力量です。部下に多少のわがままを押しつけることがあっても、言い返せるような対称性を守っているかぎりは、パワハラとは言われないものです。