愛知県警より少し多い程度の人員で世界6位の領海・EEZを守る

日本は、447万平方キロメートルにも及ぶ広大な領海とEEZ(排他的経済水域)を有する世界屈指の海洋国家です。国土面積では世界第61位ですが、領海・EEZを含めた総水域面積では世界第6位になります。

では、その広大な海洋権益を守る海上保安庁の予算と人員がどの程度の規模なのかご存じでしょうか。予算は2431億円(令和5年度予算)、定員は1万4681人です。海上保安庁では、全国を11の管区に分け、この予算と定員、そして保有する船艇474隻、航空機92機でもって、日本周辺の海上の治安維持と安全確保に努めています(数字はいずれも『海上保安レポート2023』より)。

海上保安庁は、予算も定員も海上自衛隊の規模には到底及びません。海上自衛隊の令和5年度予算は1兆6467億円、定員は4万5141人(防衛省HP「我が国の防衛と予算―令和5年度概算要求の概要―」より)であり、航空機の数も倍以上違います。

同じ法執行機関(警察機関)である警察庁と比較しても、定員の面では都道府県警察トップ3の警視庁、大阪府警、神奈川県警には敵いません。第4位の愛知県警よりは少し多いというくらいの規模です。

東京周辺にフォーカスを当てた地図
写真=iStock.com/omersukrugoksu
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「海上保安庁を軍事機関にしなければならない」という意見

海上保安庁に関するさまざまな“誤解”が世間に広がってしまっているという実感があります。たとえば、近年散見されるようになったのは次のような意見です。

「外国のコーストガード(沿岸警備隊)は一般的に軍事機関かそれに準ずる組織だ。しかし、日本の海上保安庁は非軍事の警察機関(法執行機関)だ。これは世界標準から見るとガラパゴス化している。海上保安庁を軍事機関(あるいは準軍事機関)にしなければ、中国の脅威にも対抗できないし、有事の際に自衛隊やアメリカとの連携もうまくいかない」

また、こうした意見を主張される方は決まって海上保安庁法第25条(以下「庁法25条」)を削除すべきだと訴えています。庁法25条というのは、海上保安庁の非軍事性を明確に規定しているものです。

しかし、これも大きな誤解です。庁法25条は、1948年の海上保安庁設立当初から存在する、海上保安庁の非軍事性を確認した規定です。これは本来当然のことを念押しする形で確認する、いわゆる「入念規定」であり、たとえこの規定がなくても、海上保安庁法に定められた任務や所掌事務の規定から見て、海上保安庁が非軍事の法執行機関であることに疑いはありません。

私は、庁法25条の存在意義、役割は十分にあると考えています。