多国間での取り組みも行っている
続いて、多国間の取り組みを3つ紹介します。1つ目は、北太平洋海上保安フォーラム(NPCGF)です。海上保安庁の提唱によって2000年からスタートしました。北太平洋地域の6カ国(日本・カナダ・中国・韓国・ロシア・アメリカ)の海上保安機関のトップが一堂に会し、北太平洋の海上の安全・セキュリティの確保、海洋環境の保全等を目的とした各国間の連携・協力について毎年協議を行っています。
2つ目は、アジア海上保安機関長官級会合(HACGAM)です。こちらも2004年に海上保安庁の提唱で第1回会合を開催して以降、毎年開催されています。アジア地域の22カ国1地域2機関で構成され、アジアでの海上保安業務に関する地域的な連携・強化を図ることを目的とする多国間の取り組みです。
3つ目に紹介するのは、地域の枠組みを超えた、全世界的な取り組み、世界海上保安機関長官級会合(CGGS)です。全世界レベルでの取り組みは、2017年9月に開かれた第1回世界海上保安機関長官級会合が世界初です。これも海上保安庁の提唱によってスタートし、第1回会合には世界34カ国1地域、38の海上保安機関等が参加。2019年の第2回会合には世界中から75カ国84機関が集まりました。
他国の沿岸警備隊の能力向上支援を担当
近年、アジア諸国において海上保安機関の設立が相次ぎ、それに伴って海上保安庁に対する技術指導等の要請、すなわちキャパシティ・ビルディング(能力向上支援)の要請が非常に多くなってきました。
こうした背景から、海上保安庁では2017年に能力向上支援の専従部門「モバイルコーポレーションチーム(MCT)」を発足。これまでの実績としては、チーム発足後から2023年11月1日までの期間で18カ国に95回派遣し、8カ国1機関に22回のオンライン研修を実施してきました。
また、海上保安庁が海外に出て行くのとは反対に、アジア各国の海上保安機関の若手幹部候補職員を日本に招聘し、海上保安政策に関する修士レベルの教育を実施する「海上保安政策プログラム(MSP)」という取り組みも2015年から行っています。
※「*」がついた注および補足はダイジェスト作成者によるもの
コメントby SERENDIP
非軍事組織でありながら安全保障上きわめて重要なミッションを負うという立ち位置から、さまざまな「つなぐ」役割を果たすというのが、著者の考える海保のあるべき姿なのだろう。つまり、海上自衛隊や他国の沿岸警備隊(コーストガード)との密な連携によって力を発揮するということだ。著者は長官としても、それ以前の領海警備対策官としても尖閣問題に深く関わっており、国家間の争いの最前線にいた。それだけに、軍事だけに頼らない安全保障のあり方についての主張には説得力が感じられる。
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