地価が上昇しているのは「県の一部」

一方の埼玉県内の各都市別の平均上昇率をみるとさいたま市2.7%、蕨市6.0%、川越市5.3%、越谷市3.0%など上昇してはいるものの、千葉県各市の成長率の高さには及んでいない。ちなみに両県の県庁所在地を比べても、千葉市は伸び率3.7%でさいたま市を上回っているのである。

コロナ禍による働き方の変化や都心新築マンションの高騰などを理由に、郊外部の地価が上昇基調にあるとの見方もあるが、実はひとくちに郊外といっても、街によって大きな差が生じ始めているのが現実だ。

だが、千葉県のすべての都市で急激に地価が上昇しているわけではないことは付け加えておきたい。流山市や市川市、柏市などで高い水準の上昇を示しているのとは対照的に、同じような都心への通勤圏にありながら、これらの街と同様の上昇率を示せていない街もある。

増加率が低いのは佐倉市1.1%、八千代市1.3%、四街道市1.5%などである。かつては大規模な住宅団地が造成され、多くのサラリーマンたちが満員電車に揺られて通勤したベッドタウンに今、かつての賑わいはない。

神奈川県でも「格差」が生じている

いっぽうの埼玉県内では、行田市が0.6%の下落。同様に加須市-0.4%、羽生市-0.4%など昨年に続いて地価が下落した街の名が並ぶ。

埼玉と千葉の争いをシニカルに眺めている神奈川はどうだろうか。神奈川県内でも郊外都市間で地価の成長スピードに大きな差が生じ始めている。

都市別平均上昇率は湘南エリアの藤沢市4.2%、茅ケ崎市5.2%、鎌倉市3.8%、逗子市3.9%など軒並み高い上昇を示しているのに対して、同じく通勤圏といわれた小田原市0.5%、三浦市0.4%、横須賀市0.9%などではほとんど地価は上昇していない。