いきすぎた「しつけ」や「教育」をしていないか

以上のように子どもを追い詰める声がけを執拗に繰り返すことは、子どもの勉強嫌いを助長するだけでなく、「教育虐待」にあたるケースもあります。教育虐待の定義を調べると、以下のような著書や報道がありました。

昨年(2011年)12月に茨城県つくば市で開かれた「日本子ども虐待防止学会」で、武田信子教授らは「子どもの受忍限度を超えて勉強させるのは『教育虐待』になる」と発表、初めて公の場で「教育虐待」の言葉を使った。「教育」の名のもとで親の言いなりにさせられるケースはもちろん、親の所得格差が子どもの学習権に大きく影響する状態も「教育虐待」に含まれるとした。
(「教育虐待:勉強できる子になってほしい……過剰な期待」毎日新聞、2012年8月23日)


教育虐待とは、「あなたのため」という大義名分のもとに親が子に行ういきすぎた「しつけ」や「教育」のこと
おおたとしまさ『ルポ 教育虐待』(ディスカヴァー携書)

家庭という密室で繰り返される教育虐待は、子どもたちから「生きる力」を奪います。日常的にいきすぎた「しつけ」や「教育」をしていないか、自問自答する姿勢が必要です。

過干渉な親に振り回されないために

高校生なのにノートチェックまでしようとする過干渉な親御さんは、教育虐待の可能性を秘めています。しかし教育虐待傾向のある親御さんには「あなたのため」という大義名分があり、全く悪気がないため、心ない声がけや態度を変えることは容易ではありません。それなら子どもたちは、理不尽な親の言動をやり過ごせる、心のあり方を習得したほうが勉強に身が入ります。

ノートを取る人の手元
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

私は教育虐待傾向にある親を持つ子どもには、親を「厄介なファンだと思え」と伝えています。「熱狂的なファンであるためにヤジを飛ばし続けるスポーツファン」だと思えば、暴言を真に受けず、心の平穏を保つことができます。

難しい勉強の強要や過干渉のせいで、やる気がゼロになったり、極度な不安症状を抱えたりすると、メンタルを立て直すのに時間がかかります。また医学部受験生全般に言えることなのですが、難しい勉強ばかりしてきて基礎問題を習得できておらず、知識が上滑りしている人も大変多いです。

私は常日頃塾生たちに「難問を解く必要はない」「人との比較は意味がない」と言い続けています。またどんな小さなことでも、自分で自分を褒めてあげることも大切です。自分で学ぶ動機付けを行い、自己肯定感を高めていくと、親からの心ない言動にも動じず生きていける強さが身につきます。その強さは医学部に進学後や医局に入った後も、役に立つのです。

2023年度医学部に合格した塾生からも「勉強面だけでなく、メンタル面の成長も感じることができた」といった喜びの声が寄せられています。

親からの心ない言葉に「引っ張られすぎない、強い心(メンタル)」で、未来を切り拓ければ素敵です。世間一般の受験の常識が、全ての受験生の成長につながるとは限りません。親も子も正しい方法論を知り、強い心(メンタル)で困難に立ち向かう力をつけてほしいと思っています。

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