ファンはどんなイベントに2万円前後のお金を払っているのか
今回、上野の飛行船シアターで開催された「VBLシリーズ ファンミーティング」は、円安ということもあって、台湾など海外から来ているお客さんも多い印象です。ロビーには、ファンから贈られた祝い花やプレゼントが並んでいました。
BLのファンミーティングは、もしかしたら最も平和で癒しの空間かもしれません。K-POPファンの友人に聞くと、K-POPコンサートでは毎回、決められたペンライトが必須で、振り方も決まっているなどハードルが高そうです。
いっぽう今回のVBLのファンミは入り口でV8の写真入りのうちわが配布。会場では独自にペンライトを振っている人もいましたが、とくに決まりはなく、座ったままリラックスして観賞できます。
構成は「奇蹟」のファンミと似ていて、トークコーナー、演技再現、歌、ゲームと進んでいきます。イベントが始まると、いきなり客席の通路に降りてきてくれた8人。この距離の近さがファンミの魅力です。また、BLドラマのCPはリアルでも仲良くしていてほしい、というのが一部のファンの願いでもあります。このイベントでも、ふとした時に手をつないでいたり見つめ合ったりするCPがいて、想像が広がりました。
トークコーナーは他愛ない内容で癒されます。
まず、司会の女性がそれぞれ来日した回数を聞くと、意外にも全員複数回来ていて、8回目の人もいました。日本で印象的なものを聞かれると「ラーメン」「自動販売機」「カツ丼」「オムライス」などの若者らしい答えが。
続いて知っている日本語について聞かれると、「新年あけましておめでとうございます」「すいませんトイレどこですか」「お先に失礼します」といったセリフが出てきて、温かい笑いが起こりました。円安で日本人が気弱になっている今、親日家のイケメンたちの言葉に励まされます。
序盤のやりとりで場を温めて、次第に本題に入っていきます。
それぞれのドラマの名キスシーンを三面モニターで上映する、というコーナーが。「Stay By My Side」のタオルを頭にかぶせて目を隠したキスシーンは、最初は軽めだったのが次第に激しくなっていきます。「フ~」「ワ~」といった歓声が起こっていて、出演した2人は恥ずかしそうでした。演じた俳優とキスシーンを一緒に眺める、というプレイのようなシチュエーションです。
最も印象的だったのは「AntiReset」のAIと教授のキスシーンでした。AIが暴走し、ロボット三原則を侵犯する勢いでした。AIが教授の体の部位ごとにキスしながら「髪は心配、耳は誘惑、唇は愛情、のどぼとけはあなたへの渇望……」などと語っていました。大きな画面にキスシーンが映し出されるたびに観客席から抑えきれない声が漏れていました。
適度な興奮と、リラックスが交互に訪れるのもファンミの醍醐味。歌のコーナーに続いて「デート映像を見ながらまったりトーク」が行なわれました。「You Are Mine」出演のCPが銀座で朝食という企画では、てっきりおしゃれなカフェで飲食するのかと思ったら……コンビニで買った、さめたカレーや生ハムチーズなどを、銀座ファイブ前の小さい公園で食べるというロケでした。
老婆心ながら、もっと良いものを食べさせてあげたほうが……と思ったのですが、売り出し中の俳優なので初心を忘れないため、という意味があるのでしょうか。ファンの、もっと支えてあげたい欲も刺激します。
ゲームコーナーでは、BLのファンミに時々出てくる重要な小道具、ポストイットが登場。「相手の体に貼られたポストイットを口ではがす」という内容でした。うなじや太ももなどに貼られたポストイットを、皆慣れた感じで、60秒以内に次々とはがしていきます。
約2時間のファンミが終わったと思ったら、最後、8人全員がお見送りしてくれて、お客さんは、歩きながら手を振ったりハイタッチしたり、少し会話できる、という特典が。8人の俳優が横に並び、お客さん全員と笑顔で目を合わせてくれました。一人とハイタッチしたら、体温がかなり熱く……、これからさらにのぼりつめていこうという野望がみなぎっているようです。
イベントを終えても俳優たちに疲れた様子がないのは、若くて体力があるというのもありますが、BLドラマのファンの平和な空気のおかげ、というのもありそうです。
おそらくファンの多くは、俳優個人に恋愛感情を抱くというよりも、基本的にCP推しで、2人がイチャついたり幸せそうな姿を見たい、という思いのほうが大きいのではないかと推察します。
俳優は、強い念を受けて消耗することがなく、CP同士で戯れていればファンが喜んでくれるので、体力的にもラクなのかもしれません。ファンと俳優が良い距離感を保てています。イベントの最後に、「皆さんの幸せを祈ります」と言う俳優も何人かいて、台湾のBLのファンミーティングは、お互い幸せを願い合う平和な空間でした。