「俺、その言い訳、かなり嫌いで」
庄司太樹(しょうじ・たいき)さんは宮城県石巻商業高等学校(総合ビジネス学科)3年生。夏のアップルストア銀座店でのイベント(連載第15回)で触れた「TOMODACHIサマー2012 ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」参加者有志の集まり「T4M」の提唱者だ。つまり、こちらに「具体的に何をやるのか、よくわからんのですが」と意地悪な質問をされた当人である。
まず、めでたい話を先に書こう。庄司さんは11月22日、福島大学経済経営学類の推薦入試合格通知を受け取った。9月の取材のときは福島大学の名前が出ていなかったので、ちょっと驚いた。福島大に進む理由をメールで問うと、こういう返事が返ってきた。
「福島が、ぼくが活動的になるのにいちばん面白そうだからです。被災地はこれからよくなる、よくする場所なので、物事を変える、いろいろな経験をするのに適した場所だと思います。また自宅から離れれば自立しなければならないので、そういった意味で自分がいろんな意味で大きな成長になると思い、被災地だけど宮城ではなく福島にしました」
9月の取材時、庄司さんは、将来やりたいことを次のように語っている。
「もともと、高校教師になりたいなぁと思ってて。生徒の将来、未来を『いい方向に導けたらなぁ』と思って。教師次第で変わってくるのが面白いかなと思ってたんですけど、アメリカ行ったり、震災でボランティアとかして、みんなの役に立つような仕事もいいのかって、ちょっと今揺れてる感じです。そういうことをできる授業をする教師というのも面白そうだし。最初は中学校教師を考えてたんですけど、中学校って『学力的にこの高校に行ったほうがいいんじゃないか』というような指導しかしない。でも、高校だと『あなたにはこういう適性があるから、こういう道もいいんじゃないか』っていう、いろんな可能性の提示ができるんじゃないかなって。学校の勉強を教えたいんじゃなくて、人間的な成長っていうか、そういうことを、これから社会に出て行く人に——まぁ、自分はまだ社会に出てないんですけど——『こういうことが大事なんじゃないか』って教えたら面白いかなと思ってます」
進路指導に意欲を感じて高校教師を志望する。それは商業高校で学ぶ庄司さんの体験とつながっていた。
「『この高校からは就職できないから』って言って諦めさせるんじゃなくて、やっぱりその人(生徒)の夢を叶えてあげたいから。うち、実業高校なんで、他の高校よりは進路相談のときに『こういう所あるよ』と具体的な話は結構あるんで。聞いた話ですけど、『楽天の球場で働きたい』って先輩が前にいたらしくて。で、野球部の監督の先生が、球場の会社にちょっと知ってる人がいたみたいで、『じゃあ、聞いてみるよ』って。で、先生と本人の頑張りもあって、職業体験とかもやって、受かったんですよ。それまで、就職実績なかったんですけど。その人、研修のあとに震災がきて、亡くなっちゃったんですけど。
俺も今回海外に行く経験して、行くとやっぱり、興味が英語のほうに傾く。でも、実際問題、商業高校から英語のほう(の大学)に行くっていうのは、ほとんど無理に近い話です。それは単位の問題だから仕方ないんですけど、そういった時に、『ここに入ってしまったのが失敗だ』って思わせたくないんですよ。正直、自分も、若干失敗したなと思ってて。でも、『ここに来て、海外に行く経験できたから、まぁそれでいいか』って最近思い始めてるんですけど」
自分の環境というものは、言い訳に使うと気が楽になるのも事実です。「うちの学校はこのくらいだから」、もしくは、「うちの県は」「うちの町は」、そして「うちは被災地だから」。こちらの問いに、庄司さんはこう答えた。
「そうですね。でも、俺、その言い訳、かなり嫌いで」
わかるような気がする。だが訊こう。なぜ、嫌いなのか。
(明日へ続く)