ブランド群の整理、統廃合が必要ではないか

こうした状況を踏まえ、資生堂では、自社ブランド群の選択と集中の一環として、2021年7月に「TSUBAKI(ツバキ)」や「uno(ウーノ)」などを扱うパーソナルケア事業を投資ファンドに売却している。さらに、国内での商品数を2022年末から2割の削減を目指す一方、主力ブランドである「Clé de Peau Beauté(クレ・ド・ポー ボーテ)」や「SHISEIDO(シセイドウ)」「ELIXIR(エリクシール)」に注力するなど、トランスフォーメーションを進めてはいる。

素朴な疑問ではあるが、資生堂の一番のブランドは「資生堂」ではないだろうか。「資生堂」はブランド自体確立されている一方、「銀座」「高価格」「伝統的」といった固定イメージもあり、こうした既存イメージを打破するため、あえて資生堂を冠しないさまざまなブランドを多角的に展開することで、若年層を含むあらゆる世代の取り込みを図ってきた側面はあろう。

いずれにせよ、エスティ ローダーやP&G、ユニリーバに加え、LVMHなど欧米の高級ファッションブランド系の化粧品と対抗するためにも、拡大し過ぎたブランド群の整理統廃合を急ピッチで進める段階にある。

もっともブランドの乱立は、日本企業の共通の課題かもしれない。化粧品に限らず、自動車や時計に装飾品にホテルなど、高品質・高評価にもかかわらず、なかなか、日本発の世界的なラグジュアリーブランドが誕生しない大きな原因の一つといえよう。

国内化粧品市場は拡大しているものの…

日本国内における、韓国ブランドなど低価格商品の広がりも、高価格帯をメインとする資生堂にとっては逆風だ。コロナ禍において、マスク着用が増え外出機会が減ったことで、化粧品にかける優先順位が下がり、低価格志向が定着。若年層においてSNSを介して、コンビニやドラッグストアに加え、ECサイトにて、韓国ブランドなど低価格商品が支持を得る状況が続いている。今や、日本においても、SNSでのインフルエンサーや口コミにより化粧品購入に至るケースは非常に多いとみられる。

顧客サービス調査のフィードバックで最高の五つ星をつけている手元
写真=iStock.com/cherdchai chawienghong
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なお、矢野経済研究所によると、2022年度の国内化粧品市場は前年比3.5%増加の2兆3700億円であり、2023年度は同3.4%増加の2兆4500億円を見込む。

製品カテゴリー別では、スキンケア市場が47.3%と全体の半分近くを占め、以下、ヘアケア市場20.3%、メイクアップ市場17.6%、男性用化粧品5.4%などとなっている。

このように、実は、日本市場自体は、拡大傾向にあるものの、市場拡大のパイを韓国ブランドにごっそり持って行かれてしまっているのだ。

資生堂もさまざまな手を打っているが、若年層のトレンドを捉え、振り向かせることに妙手はなく簡単ではない。