米国事業では買収と撤退を繰り返している

資生堂では、安定した成長が見込める米国事業も拡大するとしている。

確かに、米国は世界最大級の化粧品市場であり、安定性に加え成長性も見込める市場であるものの、エスティ ローダーやP&G、ユニリーバに加え、LVMHなど欧米の高級ファッションブランド系の化粧品などとの競争は熾烈であり、資生堂の米州事業の売上高は前年比20%減の1103億円にすぎない(2023年12月)。

このため、抜本的な規模拡大を目指し、2024年2月には、米国で高価格スキンケア化粧品事業を展開するDDGスキンケアホールディングスを4億5000万ドル(約640億円)で買収している。

しかしながら、米国での企業買収がうまくいくかどうかは不透明だ。資生堂は、過去何度も米国買収において高い授業料を払ってきたからだ。

自由の女神像とマンハッタン
写真=iStock.com/upthebanner
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2010年に19億ドル(約1800億円)で買収した米国「ベアミネラル」は、業績不振から、2012年度と2017年度に累計900億円超の減損損失を計上した。最終的には、2016年に買収したものの同じく赤字続きの米国「ローラ メルシエ」などとともに、2021年に二束三文の7億ドル(約770億円)で米国の投資ファンドに売却している。2019年に8億4500万ドル(約895億円)で買収した米国「ドランク エレファント」もぱっとしないままだ。

対面販売は「文化」だが、時代はECに

② ECサイトの混在

名門ブランド「資生堂」低迷の根本的な問題の2つ目は、電子商取引(EC)の遅れだ。

高級ブランドを中心に、百貨店や化粧品専門店での美容部員によるカウンセリングを伴う対面での販売スタイルは、資生堂が長年顧客とともに培ってきた「文化」でもある。

一方で、既存の有人店舗での営業員による販売手法は、化粧品に限らず、あらゆる業種で、コストやスピードの面から従来の規模を維持することが困難となっている。いまや、ネット取引やSNSでの情報発信など、若い世代向けだけでなく、シニアや富裕層を含め全ての年代層に浸透している。また、ポイント獲得や優良顧客の会員化といった囲い込みも広がっている。

こうしたなか、資生堂では、化粧品専門店など得意先と連動しオンラインでのカウンセリングやチャットも可能なECサイト「Omise+(オミセプラス)」や、資生堂の公式ECサイト「watashi+(ワタシプラス)」、百貨店やイオンなど専門店のECサイトなどの強化・拡充により、国内Eコマース売上比率を現状の10%台前半から2025年には30%へ拡大するとしている。