同僚をデモに誘う行為はどうだろうか。工場の門前で出勤してくる従業員に政治ビラを大量に配り、人だかりができるといったレベルになると、政治活動かどうか以前に、事業に影響がある点を咎められかねない。
しかし、仲の良い同僚に「金曜日に官邸前で反原発デモがあるから行ってみようか」と休憩時間中に話しかける程度では、政治活動を禁じた就業規則があったとしても、違反とまではいえないはずだ。ただし、自分が参加する場合と他人を勧誘する場合では、後者のほうがより積極的、能動的に運動に関わっていることになると、自覚しておきたい。
以上が一般的な考え方だが、個別の企業や事情によっては、政治活動とはいえない純粋な反原発運動でも厄介な問題に発展することがある。
例えば原子力発電所のある電力会社の社員ならどうか。反原発運動は、企業の事業目的と相反する可能性がある。事業目的を阻害したなどと言われて処分の対象になる恐れがある。
もっとも、デモ中に電力会社の社員であることを自らアピールでもしない限り、就業時間外に参加すること自体は制限されないと考える。
逆に、デモ中にテレビのインタビューに積極的に答えて、「○○社に勤務する私も原発に反対です」などと会社の名前を前面に出すことは慎むべきだ。個人の自由どころか、会社の名前を悪用した行為にもなりかねない。会社とは無関係の個人参加であることを徹底するためには、スーツの社員バッジも要注意。デモを取材しているテレビカメラには極力近寄らないことも、自己防衛として大切だ。
(構成=斎藤栄一郎 写真=PANA)