同じ不倫でも「公私混同」かどうかで処分は変わる

育児や教育、あるいはブライダルに関係する企業や業界であれば、不倫は企業のイメージと信用の低下につながり、それが業績に影響する可能性もある。こうした場合は、辞任せざるを得なくなるのは理解できる。

さらに、同じ不倫でも完全に私的な行為なのか否かで、事情は異なってくる。ウエルシアの松本氏の場合は、取引先の女性であったこと、“社宅”を利用していたと報道されており、これが事実であれば「公私混同」と見られるし、相手の女性が所属する企業への利益誘導がはかられる懸念もある。企業経営にも悪影響を及ぼしかねないし、すでにそうしたことが行われているのではないかという疑いも生じてしまう。

辞任をしなければ、メディアからも、ステークホルダー(利害関係者)からも、厳しい目で見られ、松本氏個人だけでなく、企業のイメージダウンにもつながる。

テスラやアマゾンのCEOは辞任していない

企業コンプライアンスに厳しい欧米においても、完全に私的な行為であれば、不倫によって経営者が辞任に追い込まれることはない。

2015年テスラモーターズ年次総会でのマスク氏
2015年テスラモーターズ年次総会でのマスク氏(写真=Steve Jurvetson/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

テスラの創業者イーロン・マスクは、Googleの共同創設者であるセルゲイ・ブリンの妻と不倫をしていたと報道され、大きなスキャンダルとなったが、経営者としての進退を問われることはなかった。アマゾン創業者のジェフ・ベゾスも不倫が発覚し、同じく大きなスキャンダルとなったが、やはり辞任はしていない。

両氏ともに創業者であり、大株主でもあるという特殊事情があるように思われるかもしれないが、私的な不倫に対して欧米では概して寛容である。

一方で、経営者と従業員との間の社内恋愛はご法度で、インテルやマクドナルドなどでは、部下と関係を持ったCEOが、それを理由に解任されている。「公」と「私」は切り分けて考えるが、公私が区別できない行為については、厳しく罰せられるのが通例である。