なぜ島民は“不便さ”を感じていないのだろうか?

ちなみに、観光客として青ヶ島に行くときは、3食付きの民宿に泊まるのが一般的だ。商店では弁当や惣菜は取り扱っておらず、食事を提供している食堂やカフェも島内にはないからだ。例えば、集落の中心部に位置する民宿「かいゆう丸」では、島寿司や明日葉の和物など、青ヶ島の郷土料理が味わえる。

しかし今回の旅では、青ヶ島の“日常生活”を体験するために、普段は人が住んでいる民家を一時的に借りて、そこを宿泊先とした。そのため、滞在中は島民と同じように、3食自炊の生活となる。限られた食材で、試行錯誤しながらレシピを考えなければならない。

この島では、レシピサイトに載っている材料がすぐに手に入るとは限らない。惣菜を買えるお店や定食屋もない。きっと、島での生活は不便なことも多いはずだ。

しかし島の人たちは、不便さを感じていない様子だった。採れたての野菜がいつでも手に入る環境があり、家族や親しい人達と集まって、「今日は何を作ろうか」と相談しながらみんなでキッチンに立ち、食卓を囲む日常があるからだろう。

3日目はコワーキングスペースと星空の絶景スポットへ

青ヶ島の生活にも慣れてきた3日目の夜。この日は、夕食を食べたあとに青ヶ島唯一のコワーキングスペース「NYAYA」に移動し、映画鑑賞をすることに。NYAYAも集落内にあるため、徒歩で行ける。

コワーキングスペースとしての利用はもちろん、事前に予約すれば貸し切りもできる。Wi-Fiの他、投影機やスクリーンも常設してある。島内の人口が156人と少ないため、Wi-Fiが混み合うことはない。むしろ、いつもよりも速く感じ、PCの作業もスムーズに行えた。

映画を見終わって外に出たら、星空が広がっていた。冬は風が強い日が多く、その影響で船が出港できない日も多い。でも、風が強ければ強いほど雲が流れ、夜には満天の星が見えるようになる。

青ヶ島は空を遮る民家や建物が少ないため、どこからでも星空が見える。が、今回は集落から少し歩いて、島の人たちが教えてくれた星空の絶景スポットに向かった。

集落から歩いて15分ほど。数頭の牛を育てる「ジョウマン共同牧場」に到着した。時間は深夜1時ごろ。牛たちは寝しずまり、住宅の明かりはもちろん、宿舎の明かりも、街灯もひとつもない。見上げるとそこには、ただただ、満天の星が広がっていた。

そして青ヶ島に到着して4日目の12月19日。約1週間ぶりに船が運行することが決まった。

人口156人、上陸困難な“絶海の孤島”青ヶ島を現地取材! 1週間生活してわかった“リアルな島暮らし”〉へ続く

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