青ヶ島に上陸し、唯一の集落「岡部地区」に向かうと…
さて、話を現在の青ヶ島に戻そう。無事島に到着し、ヘリコプターを降りた筆者たちは、青ヶ島唯一の集落「岡部地区」に向かった。
青ヶ島にはバスやタクシーがないため、移動手段は徒歩かレンタカーがメインとなる。ヘリポートは集落と隣接しており、集落も端から端まで歩ける距離。数日滞在する程度ならレンタカーなしでも困ることはなさそうだ。
この日は風が強いものの、暖かくて過ごしやすい気候だったため、徒歩で集落まで行くことにした。断崖絶壁に囲まれた島のため、坂が多い。郵便局や商店、ガソリンスタンドといった生活に必要な施設のほとんどが、この集落内にある。
島唯一の商店に入ってみると、お菓子やカップ麺は置いてあるものの、パンや生鮮食品の棚はほとんど空っぽだった。店内にいた島民に話を聞いたところ、もう4日も連絡船が来ていないという。
しばらく連絡船が来なくても食材に困らないワケ
青ヶ島の物流は、現在も連絡船の運航状況に左右されている。船が来ない間は、もちろん食品も補充されない。島民たちはこの期間をどのように乗り越えているのだろうか。
「ほとんどの島民が、自分の畑を持っています。だから、しばらく物流が途絶えても食材には困らないんですよ。足りないものはご近所さんにいただくことも多いですね」
そう教えてくれたのは、青ヶ島での日常を発信するYouTuber・佐々木加絵さんだ。
何かをもらったら、代わりに自分の畑で採れた野菜をあげるか、“お手伝い”をすることでお返しをしているのだそう。この島では、今も「物々交換」が珍しくない。物流が不安定な島だから、お金よりも“物”の価値が他の場所と比べて高いのだろう。
「青ヶ島には明日葉があるから生き延びることができる」
島内を散策していると、島唐辛子と明日葉が至るところに自生しているのを目にする。明日葉は、「今日新芽を摘んでも、明日には新しい芽が出てくる」という名前の由来の通り、高い生命力と栄養価を誇る食材だ。島の人達からは「本格的に物流が途絶えても、青ヶ島には明日葉があるから生き延びることはできる」と信頼されている。
島唐辛子と明日葉は、宿泊先の民家の庭にも自生していた。宿泊中には、商店で購入した乾麺と庭から採れたての新鮮な島唐辛子と明日葉を使って、「明日葉のペペロンチーノ」をつくった。トッピングには、黒潮の海水を地熱蒸気で温めて作った青ヶ島の特産品「ひんぎゃの塩」を振りかける。明日葉は思ったよりもクセがなく美味しい。