ヘリコプターの座席確保のための争奪戦がスタート

令和となった現在、青ヶ島に行く方法は八丈島から週5回出航する連絡船「くろしお丸」と、同じく八丈島から1日1便出るヘリコプターの2つ。以前と比べると交通手段は増えたものの、くろしお丸の就航率は、5割前後。風や波が強い冬の時期は、1週間以上運航しないこともあるという。

一方で、ヘリコプターの就航率は8割以上と安定しているので、青ヶ島に行くにはこの座席を確保するのが得策だ。しかし、このヘリコプターの座席は9席のみ。

筆者はそんな青ヶ島に、島しょ地域のブランド化を推進する「東京宝島アクセラレーションプログラム」が支援する、移住体験プロジェクトの参加者として行くことになった。出発予定日の1か月前、2023年11月16日午前9時。ヘリコプターの座席確保のための争奪戦がスタートする。予約センターに電話をかけるも、通話中で繋がらない。

200回以上も電話をかけ直し、なんとか座席の確保に成功したが、帰りの便でも同じことをしなければならない。上陸は1ヶ月も先だというのに、早くも“絶海の孤島”の試練を受けている気分だった。青ヶ島は、公共交通手段が発達した現代においても、行きづらい場所である事実は変わらない。旅がスタートする前から、それを身をもって体験した。

搭乗直前に航空会社から届いた1通のメール

そして1ヶ月後の2023年12月16日。青ヶ島に向かうために、私は羽田空港へと向かっていた。ヘリに乗るためには、7時30分の羽田空港発八丈島空港行きの飛行機に搭乗しなければならないからだ。眠い目をこすりながら空港行きの電車に揺られていると、航空会社から1通のメールが届いた。

〈「12月16日ANA1891便 東京/羽田07:30発ー八丈島08:25着は八丈島空港強風のため、天候状況を確認した結果、条件付きの運航となりました。

〈結果〉

八丈島空港に着陸出来ない場合は東京/羽田空港に引き返す可能性がございます。あらかじめご了承ください。」〉

そもそも、八丈島空港に到着できない可能性が出てきてしまった。八丈島に着陸できなかったら、苦労して取ったヘリコプターの予約もやり直しになるのだろうか……?

そんな不安を抱えながら、羽田発の飛行機に搭乗した。激しく揺れる機体に不安を抱えつつも、なんとか八丈島空港に到着。そして9時55分、青ヶ島に向かうヘリコプターに乗り込む。

ヘリコプターの中は電子機器使用禁止のため撮影できなかったが、雲の合間を縫って空を飛ぶ機内から見た絶景には、言葉を失った。