生成AIを使わないという選択肢はありえない

チャットGPTのような生成AIとの付き合い方は、これからのビジネス、そして人生において最重要の課題であることは疑いない。生成AIを使わないという選択肢はもはや絶対にありえない。不使用は、ただ単に競争において圧倒的に不利になることを意味するだけである。

生産性の向上を図る際にも、生成AIは欠かせない。例えば、外国語の翻訳に生成AIを用いるのはもはや常識だし、プレゼン資料の作成などでも使わない手はない。ビジネスのあらゆる局面において、生成AIをどのように活用するかが成否を分ける時代になっているのである。

人工知能は、ある基準が与えられたら、その評価を高くするように出力を調整して「最適化」できる。例えば、荷物の輸送の一番効率の良いルートを考えるとか、スケジュールを調整するとかいったことが最適化の事例である。

最適化という考え方の適用範囲は、驚くほど広い。日本語と英語の間の翻訳は一つの最適化である。日本語の原文があるときに、それに対応する英語のうち、最適なものを生成AIが出力するのである。あるいは、文章を入れて画像や映像を出力するのも一つの最適化である。考えうるあらゆる候補のうち、文章に最もふさわしいものをアウトプットするのである。

ビジネスにおいて、最適化は仕事の効率を上げて、ものごとを迅速に進める重要な「エンジン」となる。データの集計、分析はもちろん、さまざまなワークフローも、最適化という視点から改善し、人工知能ができるところは積極的にアウトソーシングすることが大切なのである。

最悪なのは、本来、人工知能に任せれば最適化が進み、効率良くできることを、人間が抱え込んでしまうこと。無駄な作業とやりとりで時間を浪費すると、より本質的なことに脳のリソースを割く余裕がなくなってしまう。

人工知能時代に必要な洞察の一つは、効率化は、人間の脳がより本質的なこ とに注意を向けるためのスペースをつくるためにあるということなのだ。

人工知能は、確かに、人間の仕事の一部を置き換える。しかし、すべての仕事を置き換えられるわけではない。人工知能が得意なのは、最適化を通した省力化、効率化。人工知能に任せられることは思い切りアウトソーシングして、人間の脳は、創造的で付加価値を生み出すタスクに特化するのが賢い選択だといえるのである。

パソコンに入力する男性
失敗を恐れず、前例のないことにもチャレンジしていこう。失敗しても、人工知能がきちんと補って辻褄を合わせてくれる。

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