国会で協議されようとしている2案

具体的には「女性天皇」という選択肢をあらかじめ除外した上で、以下の2案を軸にほぼ各党が足並みを揃えそうな形勢だ。

これまでは、内親王・女王が国民男性と結婚されると皇族の身分を離れ、国民の仲間入りをされるルールだった(皇室典範第12条)。だがそれをそのまま維持すると、皇室にはやがて秋篠宮家のご長男、悠仁親王殿下お一方だけが残られることになる。
そこで、それらの方々がご結婚後も皇籍にとどまられるルールに変更する。しかし、配偶者とお子様は国民という位置づけになる。

これまで天皇・皇族は養子縁組が禁止されている(皇室典範第9条)。それを変更して、皇室から遥かに離れながらも血筋のつながった国民(皇統に属する男系の男子)は意外と多く実在するが、その中から遠く80年近くも前(昭和22年[1947年])に皇籍を離れた旧11宮家の男系子孫の男性に限り、現在の皇族との養子縁組によって皇籍を取得できるようにする。その場合、国民が違和感を抱く可能性を考慮して、養子本人は皇位継承資格を持たない。
ただし、かつて11あった旧宮家の多くはすでに廃絶したり、養子縁組の対象になり得る男子がいなかったりするので、年齢的な条件も考えると実際に制度の適用を受ける人物はかなり絞られる。

率直に言って、①②とも制度化するには疑問点が多い。

どちらの案も疑問だらけ

まず①は、憲法上「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」であり(第1条)、「国政に関する権能を有しない」とされる(第4条)天皇を中心とする「皇室」を支える内親王・女王が、国民として幅広い自由と権利が憲法によって保障される配偶者やお子様と“一つの世帯”を営むというプランだ。しかし、およそ無理で無茶な制度ではないか。

もし配偶者やお子様が、国民として認められる政治活動・宗教活動・経済活動などの自由を100%行使した場合、どうなるか。

家族は一体と見られるのを避けにくい。だから、それは内親王・女王ご自身の行動に近いものとして、人々に受け取られるだろう。そうすると、公正・中立であり政治に関与しないことを求められる皇室のお立場と、明らかに抵触する。

逆に内親王・女王に配慮して、配偶者やお子様に本来なら保障されるはずの自由や権利が、制度上の根拠がない「無言の圧力」によって抑圧されることも、望ましくないだろう。

②は、もともと憲法上“別枠”とされている天皇・皇族ではなく、平等であるべき「国民」の中から特定の血筋・家柄=門地の者だけが、他の国民には禁止されている皇族との養子縁組を例外的・特権的に認められるプランだ。そのため国民平等の原則に反し、憲法が禁止する「門地による差別」(第14条)に当たるという疑念が示されている。これに対して、内閣法制局も残念ながら説得力のある説明ができていない(令和5年[2023年]11月15日17日、衆院内閣委員会)。

さらに自ら「養子」になろうとする国民や、養子を受け入れて「養親」になる皇族が実際に現れるかも、不透明だ。