「子供は正直いらない」と話す
韓国人の海外進出によって、韓国の少子高齢化はますます加速しそうだ。
インドネシアで生活する韓国人に話を聞く限り、彼らの子育てへのモチベーションは高いとは言えない。
先のハンさんは「子供は正直いらない」と話す。
「子供が生まれたら韓国での激しい競争に直面することになる。韓国人として生まれれば、韓国における競争や勝ち組至上主義の価値観からは逃れられないが、自分の子供にはそんな経験をさせたくない」
また、パクさんは独身だが「自分の身分がはっきり定まらないのに、結婚相手なんて寄ってこないよ」と苦笑いする。
「私みたいな不安定な30代、40代が多いから少子化が進むんだろう。これは韓国社会の問題だと思うよ。個人ではどうしようもない」
海外に出たくて出ているわけではない
こうした傾向を韓国政府も問題視しているようだ。
尹政権は昨年、目玉政策として在外同胞庁を設立し、国外で暮らす韓国人への支援を強化する方針を打ち出した。
約1割強の国民が海外で生活する現状に対応するのはもちろん、「それだけ国民が『海外逃亡』するのを警戒しているんじゃないか」(パクさん)と言う意見も冗談に聞こえない。
韓国人は一般的にはノリが良く、明るい人が多い。「東洋のラテン民族」と言われる所以だ。だが、韓国の将来や政治の話題になると「全く信用できない」と表情が暗くなる人が多い印象を受ける。以下はハンさんの話。
「正直、韓国人で海外で本当に働きたい人って当たり前ですけど少数だと思います。私はまだ大学に行けて海外留学もできているだけいいですが、それでも厳しい。在外同胞庁などの支援策はありがたいんですが、韓国政府には経済をよくして韓国本土で職が得られるような状況を作って欲しいです」
韓国政府は2006年以降、少子化対策に約31兆円をつぎ込んだが、それでも少子化が止まる気配はない。KPOPや韓国ドラマの成功で一見華やかに見える韓国社会だが、その恩恵を受けられる人はそう多くはない。インドネシアでの取材からはそうした韓国社会の厳しさが垣間見えた。