肥満や生活習慣病、ボケてしまうリスクがどんどん高くなる

前項で「腹八分」をおすすめしましたが、アンチエイジングという視点からは腹八分目は食べすぎといえるかもしれません。

今の日本は“飽食の時代”の真っただ中。いつでもどこでもおいしい食べ物が手に入ります。ほとんどの人が知らず知らずのうちに食べすぎているといっても過言ではありません。

そういえば最近、ハードなダイエットをしている人を除けば、「腹ペコで倒れそうだ」「お腹がすいて目が回った」といった経験がある人は少ないのではないでしょうか。

人間が地球に生まれてから数十万年、ずっと飢餓に苦しんできた人類が十分な食糧を得られるようになったのは、ここ数百年のことです。

人間の遺伝子には飢餓を生き抜くために脂肪を体内に溜め込むという防衛システムが組み込まれているので、必要以上に食べたものはしっかり蓄積されていくのです。

いくら食糧の豊かな時代になっても体のシステムはそのままで、せっせと脂肪を溜め込みますから、メタボの中高年が増えるのも当たり前の話ですね。

若いうちは新陳代謝が活発で過食の影響も出にくいのですが、年齢を重ねて代謝が悪くなってからも節度なく食べ続けていると、肥満や生活習慣病、ひいてはボケてしまうリスクはどんどん高くなります。

「若返りには腹六分目がいい」という根拠

「だったら、いつもお腹をすかせていれば健康にいいのですか?」

という声も聞こえてきそうですが、医学的な立場での答えは「イエス」です。

どうしてイエスなのかわかりますか。

保坂隆、西崎知之『おだやかに80歳に向かうボケない食生活』(明日香出版社)
保坂隆、西崎知之『おだやかに80歳に向かうボケない食生活』(明日香出版社)

人間には空腹時にだけ働く「若返り遺伝子」があり、老化を抑制し、さらに寿命を延ばす働きがあるからです。

ただ、この遺伝子は、ふだんは眠っている状態で、その効果を発揮させるには遺伝子のスイッチをオンにする必要があります。

その起動方法が空腹状態をつくることなのです。

「若返りには腹六分目がいい」という根拠はここにあります。

若返り遺伝子をうまく働かせるには、次の3つのポイントに留意してください。

①お腹がすいたからといって、すぐに食事はせずに、30分~1時間の空腹時間を保ってから食事をすること。空腹時間をしばらくキープするのがポイントです。
②一日の摂取カロリーは1800キロカロリー程度に抑え、1回の食事量を腹六~七分にすること。
③栄養バランスのいい食事を心がけ、量は控えめにすること。

若返り遺伝子は老化を防ぐだけでなく、美容や病気の予防にも効果があります。たとえば、シミやシワの予防、脂肪の燃焼、動脈硬化の抑制、がんや生活習慣病の予防など、あらゆる老化要因を抑制する働きがあるといわれています。

また、この遺伝子はうれしいことに、どの年代の人でも活用できます。70代でも80代でもOKです。

「元気で長生きしたい」と願うなら、食事は腹八分ならぬ腹六分を目安としましょう。

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