インターネットの次は「宇宙ビジネス」が来る

ホリエモンは宇宙ビジネスに20年前から注目していた。すでに2005年には「なつのロケット団」という宇宙開発を目指すための民間組織に参加していたのである。インターネット興隆期に人に先駆けて地歩を築いたように宇宙ビジネスにも早めに参入していたわけだ。

加えて外的な要因もある。これまで宇宙輸送サービスはアメリカ、ロシア、中国の寡占状態だった。ところがロシアのウクライナ侵攻により、様相が変わった。ロシアは制裁によりロケットの重要部品が手に入らなくなり、開発が止まったとされる。

また、日本にとっては経済安全保障の観点から国内での打ち上げ、宇宙輸送サービスに力を入れる必要性が高まった。文科省が日本の宇宙ビジネス企業を支援するようになったのもこうした背景と関わりがあるのだろう。日本の宇宙ビジネスがさらに伸びていくのはこれからなのである。

実業家の堀江貴文さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
実業家の堀江貴文さん。インタビューはISTの本社内で行われた

ロケットは「打ち上げ成功」がすべてではない

わたしがホリエモンをインタビューしたのは大樹町の本社内である。

――民間ロケット企業には御社だけでなく、カイロスを打ち上げたスペースワンもあります。さて、ロケット会社を評価する際、どの点を見ればいいのでしょうか? 打ち上げの成功率ですか?

打ち上げの成功は重要です。しかし、成功に至る技術的マイルストーンというのがあるんです。そのマイルストーンを達成したかもまた、企業を評価する際の観点でしょう。ロケット製造にはロケットにしか使わない技術がいくつも盛り込まれています。当初、僕らが簡単にできるだろうなと想像していたところで苦労したり、逆に難しいと思っていたところは意外と苦労しなかったりしました。

例えばターボポンプという機械式のポンプがあります。ターボポンプは燃焼室に燃料と酸化剤を送る心臓部で、ロケットエンジンのなかでもっとも開発が難しい要素のひとつとされています。今回、僕らは冷走試験をやり、ターボポンプが目標の回転数で良好に動作していることを確認しました。これはZEROの初号機を打ち上げるための大きなマイルストーンです。

――ターボポンプ、聞いているだけで頭が痛くなりました。ロケット技術、難しいですね。

ですよね。難しくて、ロケットにしか使われない技術なんですよ。これまで日本で、実用化に成功した会社ってIHIしかなかった。IHIしか作っていなかったので、「ターボポンプは難しいぞ」って聞いていたんです。