「詐欺広告はなくせないから理解を」と開き直り

前澤氏は、昨年にはなりすまし詐欺広告に対する専門チームを立ち上げ、3月には通報窓口も開設。10日間で184件の被害報告もあり、被害総額は19億4899万円に上ったという。中には、1人で1億円以上の被害に遭った人もいた。

心を痛めた前澤氏がメタ社に対して対応を求めたときも、同社は「いろいろやるけど全ての詐欺広告を無くすのは無理だから理解して」と開き直る態度だったという。納得がいかない前澤氏は、Facebook Japanの味澤将宏代表に対してXで公開質問も送っている。

ご紹介したように著名人を騙るほか、AIで作成した投資を勧める偽動画広告や、投資を勧める日経新聞やみずほ証券などの偽広告というパターンもある。多くは広告経由でブラウザによるアクセスの場合に限り表示される仕組みであり、スマホのセキュリティアプリの検知も逃れてしまう。

著名人の偽広告対応に対しては、松本剛明総務大臣も問題視している。4月9日の閣議後記者会見では、プラットフォーム事業者に対して、利用規約を踏まえて適正な対応を求めると表明した。さらに、削除対応の迅速化、運用状況の透明化を求めるプロバイダ責任制限法の改正法案を今国会に提出。有識者会議で議論・検討を進めると同時に、プラットフォーム事業者や広告業界や広告主からもヒアリングしており、制度面も含めて総合的な対策の検討をするとしている。

メタ社も対策を講じてはいるが…

メタ社は、広告宣伝ポリシーの中で、本人の許可なくして有名人の画像や動画を使ってはならないとしている。有名人の写真などを使った無断のプロモーション、不正な詐欺行為、クリックをさせる行為は禁じており、なりすまし行為をしたアカウントも削除している。

同社も悪質な業者がいることは把握し、ユーザーからの通報を受けて適宜措置を講じているという。シンガポールのデータセンターのAI判定システムによって広告が表示される前に詐欺判定を行い、コンテンツモデレーターが目視で監視しているというが、やはり詐欺広告はやまない。

ネットでは、基本的に個人でも簡単な審査で広告が出せてしまうことは大きいだろう。メタ社は、広告を出稿できるアカウントの設定を厳しくしたり、広告アカウントを開設したばかりの広告出稿額の上限を大幅に引き下げたりという対策を講じているというが、それでも効果にはつながっていない。