体温と室温の差は10度以内に…
2つ目の注意点は、エアコンで急激に体を冷やさないようにしてください。たとえば気温が高い屋外から帰宅した際など、エアコンの風量を「最強」や「急冷」「パワフル」などに設定するのは避けましょう。
われわれの体は体温と環境温度の差が10度を超えると、生体の状態に支障を来し得るとされています。たとえば心臓手術を行う際、患者さんの深部体温(脳や内臓といった体の内部の温度)が37度とすると、人工心肺装置を使って血液を冷やしてから体に戻す場合、血液の温度差は10度以内にとどめます。それ以上、温度差があると、血液の成分が壊れるなどさまざまな問題が起こってしまうからです。
深部体温が37度弱でエアコンの設定温度を20度とした場合、17度の温度差があります。深部体温は体の表面の温度よりも高いので、エアコンで急激に室温を冷やすとしても温度差は10~15度程度にとどめましょう。そのうえで、徐々に体が冷えてきたなと感じたら、設定温度を27度くらいまで上げるのがいいでしょう。
心臓にトラブルがあったり、薬をいくつも飲んでいる人は、急激に体を冷やすとさらにリスクが高くなります。血管が一気に縮まって血圧が急に上昇したり、血管が痙攣を起こしたような状態になって冠動脈の血流低下を招くケースもあります。「急激な変化」を避け、自分が身を置く環境の管理はゆっくり行うように心がけてください。
就寝時のエアコンが命を守る…
3つ目の注意点は就寝時のエアコンの使用です。心臓はもちろん、健康維持のためには睡眠が何より大切です。自分が睡眠をとりやすい環境をつくるためにエアコンを使うのです。一般的に、真夏の就寝時は「少し高めの温度設定にし、エアコンをつけっぱなしにして就寝するのが望ましい」とされています。
細かいタイマー設定ができるなら、気温が下がる深夜はオフ、気温が上がる時間帯に合わせて自動的にオンになるように設定するのもいいでしょう。自分が夜間にリラックスできる環境温度を探し、エアコンを利用してそれをつくるパターンを学んで実践するのです。
エアコンは、近年の温暖化による環境温度上昇の下では健康維持のために重要な家電です。とくに、いくつも薬を飲んでいる人は、適正に使用することが求められます。薬というのはだいたい飲む時間が決まっているものです。服薬して一定の効果を出すためには、それに合わせて自分の体の“条件”を整えておかなければなりません。薬の効果をきちんと発揮させるには、睡眠環境を含め、食事、排泄、水分量などをきちんと保つことが欠かせないのです。
生体の不感蒸泄(=吐く息や、皮膚などからの自然な水分喪失)などみずから意識できない生体変化が、ときには重篤な疾患の発症のきっかけにさえなります。ですから、エアコンは「自分を守ってくれる電化製品」であると見直すことが必要です。