熱中症を防ぐために何が必要か。上皇陛下の執刀医として知られる心臓血管外科医の天野篤さんは、「熱中症になる人は、自分が熱中症だとは気づかない。体温と室温を定期的に把握することが命を守る処方箋になる」という――。

※本稿は、天野篤『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』(講談社ビーシー/講談社)の一部を再編集したものです。

体温を測る人
写真=iStock.com/bukharova
※写真はイメージです

体温測定を毎日の習慣に

心臓にトラブルがある人は、熱中症になると重症化しやすい傾向があります。ここ数年、9月になっても急に気温が上がると熱中症を招くケースが少なくありません。引き続き注意が必要です。

このような熱中症の高リスクの人はもちろん、健康な人でも、まずは熱中症にならないことが大切です。そのための対策として、とても効果的なのが「体温測定」です。

熱中症というのは、大量の汗をかくなどして体内の水分が失われ、それ以上は汗をかけなくなって体温を下げることができなくなり、さまざまな臓器に障害が起こる病態です。個人差はありますが、一般的には体温が37.0度以上あるときは危険性が高まるとされ、体温が39度以上あるときは脱水が深刻で危険な状態といえます。脳の温度はそれ以上になることもあり、思考停止状態になるケースさえあります。いうなれば、意識もうろう状態です。つまり、体温の上昇が熱中症の「サイン」になるのです。

1日最低2回、できれば3回…

熱中症から命を守るためには、1日に最低2回、できれば3回は体温を測る習慣をつけることをおすすめします。持病がなく健康な人が気温の高い環境で行動する場合、1日に何度も体温を測ってみると、状況によってかなりの変化があります。私は耳の中のもっとも高い鼓膜の温度を測定できる耳式体温計を使っていて、今は右耳が36.0度、左耳も36.0度です。衣服を脱ぎ着することなく測定できるのでとても便利です。

私の場合、何かしら考えて整理しながら会話している状況では右側が高くなります。英語の論文を書いていると逆に左側のほうが高くなり、体を動かしているときはもっと極端に左右の耳で体温差が表れます。それくらい、体温は自分の体の状態を反映してくれるのです。

熱中症を予防するためには、脳や内臓といった体の内部の温度(深部体温)を測れるわきの下、口(舌)、耳、直腸などの場所で測定し、普段の体温よりも高くなっているときは、まずは首元など太い血管が通っているところを冷やしましょう。