EVの需要がHVに流れているわけではない
その欧州の2月の自動車販売状況を見るとEVが対前年比10%増と市場並の伸びだったのに対して、HV(ハイブリッド車)が12%増と市場での構成比を伸ばしています。中でも欧州市場をそれほど得意としていないトヨタがHVを武器に14%増を達成しました。
このHVの好調さは世界的にみられる傾向で、調査会社のマークラインズによれば2023年は世界市場でのEVの伸び率が28%だったのに対して、HVは30%増と台数だけでなく伸び率でもEVを上回っています。
これらの数字から「もともと無理筋のEVシフトの限界が露呈した結果、世界はHVシフトに動いている」という論調が広まっています。この論調はある意味で正しいのですが、若干ミスリードされています。
というのも世界でHVシフトが起きているのは明らかなのですが、その因果関係はEVをHVが喰っているというわけではありません。そうではなくガソリン車とディーゼル車の需要がHVに流れているのです。
欧州市場で一番売れ行きが伸びているのはPHV車
その背景にあるのが昨年世界的に起きたガソリン代の高騰です。HVはガソリン車と比較して70%ほど燃費が安いので、エネルギー危機下では売れやすいのです。
ではHVシフトはEV失速にまったく関係がないのかというと、実はそうでもないところが面白いのです。というのも実は欧州市場で一番売れ行きが伸びているのはPHV車(プラグインハイブリッド)なのです。
ふたたび直近の2月の欧州市場での新車販売台数を見ますとHV車が市場全体の29%、EV車が全体の13%を占めるのに対して、PHV車の市場構成比は7%にまで上がってきています。そのPHV車の増加率は前年比24%と他の自動車カテゴリーと比較して一番大きく伸びているのです。
ここからわかることは、これまで脱炭素に高い意識を持っているユーザーが選ぶのはEV一択だったところから、直近の状況はEVかPHVかの二択へと消費がシフトしているのです。
PHV車は帰宅後に電源につなげば充電できるので、主に近場で乗る人の場合EVと同じように環境に配慮した利用ができます。一方で遠乗りするときにはガソリンが給油できますから、途中で電池の減りを気にする必要もありません。こういった特性から、今後EVを喰っていく製品があるとしたら、それはPHV車なのだということに市場が気づき始めているようなのです。