中国メーカーのシェア拡大という「欧州の誤算」

1つは欧州がこのEVシフトを利用して日本車を抑え込もうと考えていたことについての誤算です。HVでは日本メーカーに出し抜かれたが、EVで先行することで世界市場が手に入ると考えていたことです。

日本メーカーがEVに大きく出遅れたことでフォルクスワーゲン、ルノー、そしてアメリカのGMなどは競争を優位に進められると思っていたはずですが、そこでひとつめの誤算が起きます。欧州市場で、日本車に代わって中国メーカーがシェアを拡大するのです。

ヨーロッパのEV市場では2021年当時は1%に満たなかった中国車が、2023年上期には8%までシェアを急拡大しました。それであわててEUが「中国製EVについてシェア拡大に不正に中国政府の補助金が用いられているのではないか調査する」と言い出しているわけです。

実はこの話、日本車メーカーにも影響があります。というのも本来、日本メーカーの牙城であったはずのタイでも中国製のEVが猛威をふるい、市場を席捲し始めているのです。EVシフトをすすめた結果が、世界の自動車市場を中国に押さえられ始めていることに世界が気づきはじめたのです。

電気自動車充電ステーション
写真=iStock.com/Alexandros Michailidis
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熾烈な価格競争、テスラの決算に注目が集まる

2つめの誤算が熾烈な価格競争です。急激に中国勢が生産キャパシティを増やした一方で、中国経済全体が失速を始めたこともあいまって、中国市場でEVの価格が急速に下がってきています。

その結果として中国市場では新車に占めるEVの比率が40%を超えて上昇する一方で、中国市場での欧米および日本車メーカーのシェアが急激に下がってしまいました。それまでガソリン車含めて中国で圧倒的なシェアをもっていたフォルクスワーゲンは、過去1年で見ると月によってはBYDに首位を奪われる混戦状況に追い込まれています。そして当然のことながら価格競争に巻き込まれ、それがこの記事の冒頭で紹介したVWの利益率減少へとつながっています。

テスラも中国市場で何度も新車価格の値下げを続けているのですが、それが中国市場だけに収まらなくなってきました。中国以外の国々でも中国製EV車が安さを武器にシェアを拡大しようとしてくるためテスラは値下げを余儀なくされています。

この後、4月17日(米国時間)にテスラの2024年第1四半期決算が発表されますが、私は決算内容次第では世界的に自動車関連株に影響が及ぶリスクを危惧しています。テスラはこれまでEVを製造する他社と違い、唯一圧倒的な利益を稼ぎ出すことでマグニフィセントセブンの一角を占める存在感ある企業に成長してきました。今回の決算ではおそらく、その収益力に大きな翳りが見えるはずです。