“慶應”が仕切るプロ球団が「大学校」を併設させたのか

またもう一つが補強だ。チームが強くなってファンが増え、NPBに選手を送り出せば、球団も健全な経営につながる。そのためにいい選手を集めたい。

勧誘資料を自ら作成した。NPBと試合ができる、プロ経験者の岡本克通(元阪神など)監督の指導を受けられるなどを謳った。そして最大のセールスポイントはビジネス教育を受けられる「ガイナーズ大学校」を併設していることだ。

NPBは狭き門だし、行けたとしてもいずれは引退することになる。現役選手を終えたその後の人生のほうが長い。そこで迷うことなくセカンドキャリアを歩き出すための下地を作っておかねばならない。その知識を「大学校」で養うのだ。

「(社長の)福山がオンラインで講義を受けられる大学校を作った。社会人としてのマナー、パソコンの使い方、営業の仕方という基本から、ICT教育、金融、会計、マーケティングとか経済全般も教えます。チームを出るときに野球がだめでも、いい就職ができるように」

福山社長はIT系の会社を起業し、M&Aをしてきて実績は抜群。ある意味、ビジネススクールに来て卒業するようなものだ。香川OGはこのノウハウを他の独立のチームにも提供する仕組みを構築している。

「次のステップを必ず後押しする。セカンドキャリアを最優先で考える」

これまで野球漬けだった若者にビジネス教育をして世の中に送り出す。

「高校の指導者から独立リーグに来たのは初めてだろうからね。これまでにないことをやるよ」

上田と福山は四国で新しい独立チームを作って、日本球界に新風を吹かそうとしている。

上田はこれまで球界の現状を憂いてきた。

「小学生も中学も高校生も野球人口は減っている。一日も早く全体で対策を取らないといけない」

Xでも指導者のあるべき姿、球界の改革などについて日々、発信を続けている。

また1月の中旬に「神奈川学童野球指導者セミナー」の事務局代表として、「少年期のスポーツ障害を予防する」と題し、医師や監督経験者が講演したシンポジウムを開いた。これは定期的に開催していて7回目を迎えている。

セミナーで講演する上田誠さん
写真=上田さん提供
セミナーで講演する上田誠さん

独立リーグのチームは全国に約30チームあって、拡大傾向にある。増える理由として、プロ野球は2軍までの狭き門、経済的に大学に行けない高校生がいる、大学生も試合に出る選手は限られる。社会人野球チームが減少していてもう一度、勝負してみたいという彼らの受け皿は独立、ということになる。

しかし、その独立のチームも赤字チームがほとんどで運営は厳しいと言われている。支援してくれるスポンサーは多くない。テレビ放送もなく放映権料は入らない。自前のユーチューブ放送がせいぜいだ。

香川OGの営業部隊に福山社長の慶応人脈、いわば、上田の教え子が加わった。中には社会人の名門チームで4番を打った者もいたり、一流企業を辞して加わった精鋭だ。すると昨夏以降は累積赤字を減らしていて、業績は上向いているという。