60代半ばで教員定年でゆっくり年金暮らしのはずが…
小気味の良さは江戸っ子、と書いたが、神奈川の出身。生まれてこのかた神奈川から出たことがない浜っ子だが、60代も半ばをすぎて瀬戸内海を渡って四国に住むことになった。2024年1月中旬から香川で単身赴任を始めている。
「まさか、ゆっくり年金暮らしをしようと思っていたのにさぁ」
昨年春、塾高の教員を定年退職して、野球部の教え子の会社の顧問をゆるりとやっているところだった。
「たまにゴルフでもできりゃなぁ、って」
しかし、野球界はこの人を必要としているという事だろう。
昨年11月、プロ野球独立リーグの四国アイランドリーグplus「香川オリーブガイナーズ」(以下香川OG)の球団代表に就任することになった。
6月にその教え子、福山敦士(35歳、05年甲子園出場。大卒後、サイバーエージェントへ入社、25歳で子会社取締役、27歳で独立し、次々に会社を起業)が香川OGをM&A。自らが社長に就いて上田に代表職を頼んだわけだ。
ただ、今度は勝手が違った。エンジョイ・ベースボールとは離れたところの野球との関りが仕事になった。
代表の仕事は主にチームマネジメントで、わかりやすく言うとGM的な役割だ。グラウンドの采配は監督で、球団経営は社長で選手の管理は代表になる。選手の編成を上田がすることになった。
独立リーグに所属するのは高校で甲子園に出られなかったり、大学でもケガをして公式戦に出られなかったりという選手もいる。まだ、NPBでプレーする夢もある。
しかし、独立で数年を経ても芽が出ずにNPBからドラフトされなければ選手としては希望がないと言える。次の仕事を模索したほうがいい。
いかにして諦めさせるか。ある意味、“終活のすすめ”“御看取り”をしてやるのが球団代表ということになる。
「今まで高校、大学の指導者で、“辞めるな”って言ってきた。“すみませんが、そろそろ辞めて次の道を”ってやってきてないからね」
そんな嫌な役回りだ。
選手のほとんどはまだ、夢にすがりたい。他のチームで続けられないか、と上田に訴える。各地の社会人チーム、クラブチームの知人に電話をしたそうだ。ここは培ってきた人脈が生かされた。