中盤以降の失速

ドラマは第11週で失速した。

村山興業の御曹司・愛助(水上恒司)と出会った頃からである。その後も終戦を迎えた第15週まで、戦時下でのスズ子と愛助の関係を描いた期間の数字は低迷したままだった。その後、喜劇王・タナケン(生瀬勝久)と組んで女優業に挑んで以降、数字は少しずつ改善する。

ところが愛助の入院、スズ子の出産、愛子の子育てなどでは数字は思うように上がらない。そんな中でも、「東京ブギウギ」の誕生とレコーディングなど気を吐く週もあったが、ラスト2カ月はおおむね今ひとつだったと言わざるを得ない。

こうした状況は、SNS上のつぶやきにも反映された。

主観の集積としてのデータを裏付けるような、具体的な指摘がいくつも出ていたのである。

「途中までは面白かったんだけどなぁ」
「ライブシーン以外の抑揚がなく」
「(失速したのは)ラストに向けての目標が見えないからじゃないのかな」

原因は“人間ドラマ”と“感動”不足⁉

こうした感想は、全体を通した特定層別視聴率にも表れた。

【図表】同世代内の層別個人視聴率
スイッチメディア「TVAL」から作成

個人全体を1として、「ドラマ好き」「音楽番組好き」「感動重視派」の平均を指数で示すとグラフのようになった。

基本的にドラマ好きにはよく見られた。特に朝の忙しい時間帯に情報番組ではなくドラマを見る理由は、やはりドラマが好きだということらしい。

ただし年齢が上がるに従い、「ドラマ好き」ではなく「音楽番組好き」が増えてくる。

60歳以上に至っては、2割ほど「音楽番組好き」が上回った。その意味では、笠置シヅ子をモデルとして戦後の芸能シーンを描いた制作陣の狙いは当たったと言えよう。

ただし「感動重視派」の視聴率が低い点が気になる。

若い女性に至っては個人全体を大きく下回り、年配の女性でも「ドラマ好き」とともに「感動重視派」の評価が低かった。要は人間ドラマとしての描き込みが弱く、見ていて気持ちがあまり乗らなかったということだろう。