「半導体産業の強さ=国力」の時代に

最近、中国政府は半導体関連分野の産業政策を一段と強化した。半導体関連企業の研究開発や製造技術の向上を強く支援するため産業補助金などを拡充する。米国の圧力を克服して、先端〔回路の線幅が1桁ナノ(ナノは10億分の1)メートル台〕のチップ製造技術の向上を急ぐ。

一方、米国もインテルに対して巨額の支援を行う。わが国や欧州委員会、韓国や台湾なども半導体産業の競争力向上に関連政策を強化する。主要国の半導体分野への支援強化の背景には、半導体が主要国の経済、社会、安全保障に与える影響は拡大したことがある。最新の半導体製造を、他国に先駆けて実現し国産チップを増やす。半導体産業の優劣が、その国の実力に決定的な影響を持つ時代を迎えている。

半導体受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の熊本第1工場。運営するのは子会社のJASM=2024年2月10日、熊本県菊陽町[小型無人機より撮影]
写真=時事通信フォト
半導体受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の熊本第1工場。運営するのは子会社のJASM=2024年2月10日、熊本県菊陽町[小型無人機より撮影]

AI分野の急成長もあり、先端チップの製造技術も大きく進化している。AIの深層学習強化を支えるため、複数の半導体を組み合わせる“チップレット方式”と呼ばれる製造技術が促進されている。

中国は政府調達のPCからインテル製を排除

今後、半導体などの分野で米中の対立は一段と激化することは間違いない。微細化とチップレットなどの技術進化で、さまざまな半導体関連部材の重要性も高まる。半導体製造用の封止剤や感光材やセラミックなどの分野で、わが国には比較優位性の高い企業が多い。わが国が半導体産業の競争力向上を目指すために、関連分野の支援策はさらに強化することになるだろう。

足許、中国を初め主要国は半導体製造能力の構築を支援し、安全保障体制を強化することを目指している。中国は政府調達のパソコンに使う半導体からインテルなど米国企業を排除する方針も策定した。

ファーウェイの半導体設計能力、大手ファウンドリー中芯国際集成電路製造(SMIC)の微細化推進、政府系製造装置メーカー北方華創科技集団(NAURA)の実力向上を急ぐ産業政策の方針はより明確になった。また、中国は汎用型の半導体を組み合わせてより高性能な演算ユニットなどをつくる“チップレット方式の”生産技術の強化も進める。

3月、産業投資ファンドの“国家集成電路産業投資基金”は4兆円程度の資金調達を開始した。主に地方政府が資金を拠出する。中央政府の支援が加われば、支援規模は強大になるだろう。