「愛していない夫」に執着していた

人は心が満たされていない時、不安や不足感が強い時、それを外から補おうとして自分を愛してほしい、認めてほしいという思いが強くなります。試し行為、試し行動とよばれる、愛情を確認するためにわざと困らせるような行動を無意識にすることもあります。

相手に期待して、それがかなわないと裏切られたと感じて激しく落ち込んだり、怒りを感じたりしてしまいます。これは相手の行動に自分の幸福を完全に依存させてしまっている状態です。Aさんも夫に過度に依存してしまい、過剰な期待をしてしまっていました。「それに応えてもらえなくて、一方的に不満を感じていました。そもそも夫を愛しているとは言えない状態だったのに、なぜ、あんなに夫に執着していたのでしょうね」。

女性が離婚を考えた時に不安を感じることの1つが経済的な面ですが、Aさんはそれとは無縁です。でも、自己肯定感、そして自己効力感が低く、心が安心で満たされていない人は、そもそも新しい環境や生き方を選ぶという決断ができないことが多いのです。

しかし、Aさんはカウンセリングを通じて自分の価値を外側でなく、内側に見出せるようになりました。そして、自分にもできると思えるようになったことで、機嫌よく気持ちよく生きていくためにはどうすればいいかを考えられるようになったのです。

夫との関係もよくなったのに、さっぱりと離婚できた

自分に対して「I’mOK」を出し、自身の機嫌をとれるようになると、自分で自分を幸せにできるようになります。そして、不安な感情や思考に振り回されることがなくなり、相手とのほどよい距離感や適切なコミュニケーションをとれるようになります。夫ともよいコミュニケーションがとれるようになっていきました。

ところが、その後、Aさんは意外なほどあっさりと離婚を決めたのです。自信や安心を積み重ねたことも大きいのですが、決断を後押ししたのが「5つの基本的欲求」のテストでした。心理学の理論の1つ「選択理論心理学」では、人には必ず5つの基本的欲求があると考えられています。

5つの基本的欲求

① 生存の欲求
食べたり、飲んだり、眠ったりしたい。健康でいたい。

② 愛、所属の欲求
愛し、愛される関係を築きたい。誰かとつながっていたい。他人と親しくなり、関わりを持ちたい。

③ 力の欲求
認められたい、勝ちたい、役に立ちたい(貢献、承認、達成、競争などの要素がある)。

④ 自由の欲求
自分のやりたいようにしたい。精神面の自由、経済的に自由でいたい。自分らしさを追求したい。

⑤ 楽しみの欲求
新たな知識、笑いを求めたい。教養、ユーモア、好奇心、学習・成長、ユーモアなどを追求する。